[成果の内容・特徴]
@水稲の普通期栽培では、基肥に施用した菜種油粕の有機態窒素は最高分げつ期までに60%、出穂期までに80%、収穫期までに90%が分解される。(図1)
A水田における菜種油粕の有機態窒素の分解率は、分解率が60%になる時期までは、金野らの単純型窒素無機化モデル式(N=N0(1−e−kt)+b)に水田土壌の地温を当てはめることにより、現地水田で調査することなく、簡易に推定することができる(図1、図2)。
B静置培養法による菜種油粕の種類別有機態窒素分解率は、培養初期には粉状油粕が粒状油粕よりやや早く分解するが、最終的には顕著な差はない(表1)。
C各種鶏ふんの有機態窒素分解率は、培養後約1週間で急速に進み、後は有機化、無機化を繰り返しながら推移する。調査期間中の分解率は10〜70%で、種類によって大きく異なる(表1)。
D鶏ふんの有機態窒素分解率は無機化モデル式に当てはまらない(データ略)。
[成果の活用面と留意点]
@砂壌土の水田土壌に適用し、有機栽培米安定生産のための資料とする。
A菜種油粕の施肥量や施肥時期を決定するために窒素分解率を推定する場合は、水田の平年地温を把握する必要があり、施用した菜種油粕の窒素の経時的分解率を推定する場合は、施用後の地温を測定する必要がある。
B鶏ふんの窒素分解率は種類によって著しく異なるので、施用する場合は種類をよく把握する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:水田における有機物の特性を生かした効率的施用法
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成5〜8年)
研究担当者:井上恵子、兼子明、末信真二、荒木雅登
発表論文等:平成5〜8年度化学部春夏作試験成績書