ポリプロピレンフィルム包装によるぶどう「巨峰」の長期貯蔵技術
- [要約]「巨峰」をポリプロピレンフィルム袋で密封包装し−2℃で貯蔵すると、フィルム内のガス組成は低酸素・高二酸化炭素状態となり、MA効果が期待される。9月下旬に収穫した果実でも12月下旬まで全糖含量及び品質を高く保つことができる。
- 生産環境研究所・流通加工部・流通利用研究室 [連 絡 先]092-924-2930
- [部会名]生産環境 [専門]加工利用 [対象]果樹類 [分
類]指 導
[背景・ねらい]
- 本県では、「巨峰」をポリエチレンフィルム袋(PE)に、鮮度保持剤であるグレープガードとともに入れて密封包装し、−2℃で貯蔵することにより12月まで商品性を保持できることを明らかにした(平成2年度農業関係の試験研究成果)。しかし、グレープガードは主成分が亜硫酸ナトリウムであることから、消費者の青果物に対する安全志向が高まる中でグレープガード等を使用しない品質保持方法の確立が望まれている。そこで、安全志向に対応した「巨峰」の長期貯蔵技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
- @「巨峰」をポリプロピレンフィルム(OPP)で密封包装し、−2℃に貯蔵したものは酸素濃度は4〜7%、二酸化炭素濃度は4〜8%となり、MA効果が期待される(表1)。
- A酒石酸含量は、いずれの包装フィルムにおいても貯蔵3ヶ月後までほとんど低下は認められない(図1)。
- B全糖含量は貯蔵期間が長くなるにつれて低下するが、OPPで包装したもので比較的高く保つことができる(図2)。
- C「巨峰」の品質は、OPPで包装したものが最も優れ、12月下旬まで商品化率を高く保つことができる。また、12月下旬まで貯蔵したものでも出庫後の品質低下はわずかで、3日間は販売可能である(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- @「巨峰」の貯蔵技術資料として活用する。
- A品温が高い状態でポリプロピレンフィルム袋に入れ密封すると、袋内が過度の低酸素状態となり果実が発酵する恐れがあるので、十分予冷を行った後に包装する。
- B果実に傷があると腐敗が発生する恐れがあるので、貯蔵には健全果を用いる。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:新包装資材を用いた果実の鮮度保持技術の開発
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成4〜8年)
研究担当者:池田浩暢、茨木俊行
発表論文等:平成4〜8年度生産環境研究所流通加工部試験成績書