[要約]
生産現場のフキ「愛知早稲」は高率でCMVやBuMVに罹病している。これらの野外株の成長点を0.5〜0.8mmの大きさで切り出し、無機塩濃度を
1/2に減じたMS培地で培養することにより、ウイルスフリー苗を育成できる。
生産環境研究所・生物資源部・生物工学研究室
果樹苗木分場・ウイルス無毒化研究室
[連絡先] 092−924−2970
[部会名] 生産環境
[専門] バイテク
[対象] 茎葉菜類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
本県で栽培されているフキの主要品種「愛知早生」は三倍体で結実しないため、長年地下茎の分割による栄養繁殖が行われてきた。その結果、生産現場ではウイルスが原因と推察される症状が多発し、収量や品質の低下が見られる。このため、成長点培養により育成したウイルスフリー苗の導入が強く望まれている。そこで、これまでに成長点培養苗の大量増殖と馴化法及び低温保存法(平成5年度農業関係試験研究の成果)を明らかにした。
今回は、育成した成長点培養苗についてキュウリモザイクウイルス(CMV)、フキモザイクウイルス(BuMV)、アルファルファモザイクウイルス(AIMV)及びアラビスモザイクウイルス(ArMV)を検定し、ウイルスフリー化の確認を行う。
[成果の内容・特徴]
@生産現場のふきからは高率でCMV及びBuMVが検出される(表1)。
A成長点を0.5〜0.8mmの大きさで切り出し、無機塩濃度を 1/2に減じたMS培地で培養することにより、CMV、BuMV、AlMV、ArMVフリーの成長点培養苗を高率で育成することができる(表2)。
BCMVはELISA法、BuMVはアカザを用いた生物検定法、AlMV及びArMVはウエスタンブロット法により確認できる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
@ウイルスフリー苗は種苗増殖施設等を通じて生産現場へ供給する。
ACMV、BuMV及びAlMVはアブラムシによって、ArMVは線虫によって再感染するため、ウイルスフリー苗は3年毎に更新が必要である。
[具体的データ]
表1 野外株のウイルス検定結果
注)@検定法 CMV:ELISA法 BuMV:生物検定法
表2 成長点培養により育成された組織培養苗のウイルス検定結果
注)@生長点の大きさ:0.5〜0.8mm
A成長点培養の培地:無機塩濃度を1/2に減じたMS、ショ
糖3%、ゲランガム0.2%、BA 0.1mg/l,
pH5.8
B検定法CMV,BuMV:表1の注に同じA1MV,
ArMV:ウェスタンプロット法
CN.T.:未検定、−:陰性、十:陽性もしくは擬陽性
図1 AlMVのウエスタンプロットの結果
注)@N.C.:ウイルスフリーのタバコ、
P.C.:A1MV感染タバコ
A→のバンドがP.C.では確認されるが、
その他のサンプルでは確認されない。
[その他]
研究課題名:フキの無病苗の育成
予算区分:経常
研究期間:平成 6年度(平成 4〜 6年)
研究担当者:古賀正明、平島敬太、中原隆夫、草野成夫、下村克己
発表論文等:平成4〜6年度生産環境研究所生物資源部試験成績概要書