福岡県の水田土壌における理化学性の経年変化
[要約]福岡県の水田土壌では、作土の深さが改善目標値未満のほ場が多いものの改善されつつある。一方、pHは低下しており、改善目標値未満のほ場割合が増加している。可給態ケイ酸含量は増加する傾向にあるが、依然として改善目標値未満のほ場が多くみられる。
生産環境研究所・化学部・土壌管理研究室 [連絡先]092-924-2939
[部会名]生産環境 [専門]土壌 [対象]稲類 [分類]指導
[背景・ねらい]
福岡県における農耕地の約77%は水田であり、本県農業の中で水田農業は重要な地位にある。水田土壌の生産力を増進し、高品質な農産物の安定生産を図るためには、生産力の指標となる土壌養分の実態を把握することが重要である。そこで、水田土壌における理化学性の実態と経年変化を明らかにし、適切な土壌管理対策の基礎資料とする。
[成果の内容・特徴]
1 堆厩肥とケイ酸質資材の平均施用量や施用農家割合は低下しているのに対し、石灰質資材の施用農家割合は高くなっている(表1)。
2 2種兼業農家は、専業農家に比べて堆厩肥の施用農家割合および施用量とも少ないが、稲わらのすき込み農家割合は高い(表1)。
3 作土の深さは改善の方向にあるが(表2)、改善目標値未満のほ場割合は全体の約76%を占めている(表3)。
4 pHは低下する傾向にあり(表2)、改善目標値未満のほ場割合は調査開始時に比べて増加している。(表3)。
5 腐植含量は大きな変化がなく(表2)、改善目標値未満のほ場割合は全体の約26%を占めている(表3)。
6 可給態成分の含量はいずれも増加し、中でも可給態ケイ酸含量は増加する傾向にあるものの(表2)、改善目標値未満のほ場割合は、依然として全体の約47%を占めている(表3)。
[成果の活用面・留意点]
1 土づくり対策に関する普及指導上の基礎資料として活用する。
2 土壌診断に基づき有機物や土づくり資材を適正に施用する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:土壌環境基礎調査 定点調査
予算区分:国庫
研究期間:平成10年度(昭和54〜平成9年)
研究担当者:渡邉敏朗、小田原孝治、藤田 彰、酒井憲一、黒柳直彦
発表論文等:平成6〜9年度 土壌環境対策事業成績書