［要約］
ラップサイレージの発酵品質は、刈取りステージの影響は小さく、調製時の水分含有率の影響を受けやすい。イタリアンライグラス及びスーダングラスは４０〜６０％の適水分に調整することで高品質サイレージが調製できる。
畜産研究所・飼料部・飼料作物研究室
［連絡先］ 092-925-5231
［部会名］ 畜産
［専門］ 動物栄養
［対象］ 牧草類
［分類］ 普及
［背景・ねらい］
乳牛及び肉牛農家において粗飼料生産の省力化と作業効率の向上のためラップサイレージが普及してきている。しかし、ラップサイレージは調製条件の違いにより品質にバラツキが生じ易いことが知られている。このバラツキの原因を明らかにするため、草種・刈取りステージ・水分含有率が発酵品質に及ぼす影響を明らかにした。
［成果の内容・特徴］
@ラップサイレージの内部温度は、水分含有量にかかわらず外気温の影響を強く受けるが、発酵品質の影響は少ない（図１，２）。
Aイタリアンライグラスラップサイレージの発酵品質は、調整時の予乾による水分条件の影響を受けやすく、刈り取りステージによる差はほとんどない。出穂期・開花期いずれの場合も水分含有量を４０〜６０％にすることで高品質サイレージが調整できる（表１）。
Bスーダングラスラップサイレージでも、伸長期・穂孕期いずれの場合も水分含有率40〜60％で高品質サイレージが調製できる（表１）。
B低水分と中水分では発酵品質の差は少ないが、低水分の方が重量が軽く持ち運びなどのハンドリングが良い（表１）。
［成果の活用面・留意点］
@ラップサイレージの調製の基本条件として役立てる。
A刈取りステージによる発酵品質の差はほとんどないが、飼料価値の点から、できるだけイタリアンライグラスは出穂期に、スーダングラスは伸長期に調製した方が栄養価が高い。
［具体的データ］
表１ ラップサイレージの発酵品質（３ヵ月保存） （平成５〜６年）
注）@低水分１４０〜５０％、中水分：５０〜６０％、高水分：６０％以上
A乳酸、酢酸、酪酸は現物中の％
BＶＢＮ／ＴＮは全窒素に対する揮発性塩基態窒素（主にアンモニア）の割合
１２．５以下は優、１２．５〜１５．Ｏは良、１５．１〜１７．５は中、
１７．６〜２０．０は不良、２０．１以上は極度に不良
CＶ−ＳＣ０ＲＥはＶＢＮ／ＴＮと酢酸及び酪酸以上の揮発性脂肪酸含有率を
点数化したサイレージの評価基準
８０点以上は良、６０〜８０点は可、６０点以下は不良（粗飼料の品質評価
ガイドブック自給飼料品質評価研究会編）
Dａｂｃ異符号間に５％で有意差あリ
Eスーダングラス伸長期は、草丈２００〜２２５pで刈り取った
［その他］
研究課題名：草種とラップサイレージの飼料品質
予算 区分：国庫（地域重要）
研究 期間：平成６年度（平成５〜６年）
研究担当者：馬場武志、太田剛、大石登志雄
発表論文等：平成５〜６年度畜産関係試験成績書