イタリアンライグラスのラップサイレージ調製による硝酸態窒素含量の低減
[要約]
高濃度の硝酸態窒素を含むイタリアンライグラスを、ラップサイレージに調製する場合、水分含有率を65%程度以上にすることにより、硝酸態窒素含量を著しく低減することができる。
畜産研究所・飼料部・飼料作物研究室 [連絡先]092-925-5231
[部会名]畜 産 [専門]動物栄養 [対象]牧草類 [分類]指導
[背景・ねらい]
飼料作物中の硝酸態窒素含量は、窒素施用量、生育ステージ、気象条件等により大きく影響を受けるが、硝酸態窒素蓄積量が極めて高い場合、家畜が硝酸塩中毒を起こすことがある。そのため、飼料作物中の硝酸態窒素含量の低減化技術が強く求められている。
そこで、イタリアンライグラスについて、最近普及しつつあるラップサイレージに調製した場合の硝酸態窒素含量の低減効果を明らかにする。
(要望機関名:朝倉普、久留米普(H8))
[成果の内容・特徴]
1 材料草に高濃度の硝酸態窒素が含まれる場合、ラップサイレージに調製することにより硝酸態窒素含量を低減することができるが、その低減効果は水分含有率が高いほど大きい(表1)。
2 水分含有率が高い(67.8%)場合、V-スコア評価点が85点となり、発酵品質は他の低水分サイレージに比べわずかに低下する(表2)。
3 水分含有率65%以上のサイレージでは、調製前の硝酸態窒素含量の80%以上が消失する。また、そのときの硝酸態窒素残存量は100ppm未満となる(図1)。
[成果の活用面・留意点]
1 硝酸態窒素含量が高いと予測される作物をラップサイレージに調製貯蔵する際の参考とする。
2 水分含有率65%以上で調製したラップサイレージは、1〜2カ月貯蔵後給与する。
1 サイレージ中の硝酸態窒素含量は小型反射式光度計により簡易に測定できる(H10成果)ので、給与にあたって事前に測定する。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:ラップサイレージにおける硝酸態窒素含量の低減化技術
予算区分:経常
研究期間:平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者:井上信明、馬場武志、太田剛、敷田成太郎、藤吉弘子
発表論文等:平成10年度畜産関係試験成績書