高付加価値鶏卵生産のための新飼料(アマニ油けん化物)の適正配合割合


[要約]
 鶏卵へのα−リノレン酸の移行効率及び卵黄中 n-6系と n-3系必須脂肪酸の構成比( n-6/ n-3比)を指標とした場合、給与飼料に対する新飼料(アマニ油けん化物)の配合割合は 2.5%程度が望ましい。  

畜産研究所・中小家畜部・家きん研究室
[連絡先]   092−922−4100
[部会名]   畜産
[専 門]    飼育管理
[対象]    家きん類
[分類]    普及


[背景・ねらい]
  平成3年度の成果では、α−リノレン酸を豊富に含む新飼料(アマニ油脂肪酸カルシウム塩)を成鶏用配合飼料に 5%配合すると、短期間の産卵率には影響を与えず、鶏卵卵黄中のα−リノレン酸とドコサヘキサエン酸含量を増加させることを明らかにした。本新飼料は「アマニ油けん化物」として農水省の承認を受けることができた。この新飼料を用いて鶏卵に付加価値をつける際には、α−リノレン酸の移行効率のみならず、人の栄養的側面を考慮した卵黄中の必須脂肪酸の構成バランスが重要となる。必須脂肪酸のうちリノール酸(C18:2)とアラキドン酸(C20:4)の n-6系列、また n-3系列のα−リノレン酸(C18:3)とドコサヘキサエン酸(C22:6)の構成比( n-6/ n-3比)は、 2〜 4程度が人の健康保持に必要であると推奨されている。 そこで、α−リノレン酸の卵黄への移行効率と必須脂肪酸の構成比に基づいた新飼料の適正配合割合を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@新飼料は、アマニ油を主体とする粗脂肪83.7%、代謝エネルギー(ME) 5.91Mcal/Kg で、代謝率が86.1%の高脂肪、高ME飼料である(表1)。

A新飼料を長期間( 141日齢から 476日齢)採卵鶏に給与しても、産卵率及び産卵日量に大きな変化を与えない(表2)。

B 2.5%給与した場合、 150日経過後もα−リノレン酸含量が通常鶏卵の約14倍、ドコサヘキサエン酸(DHA)含量は約 1.6倍の増加量を維持する。また、同時にリノール酸とアラキドン酸及びα−リノレン酸とDHAの構成比( n-6/ n-3比)は、人の健康保持のために推奨される 2〜 4と同等の 2.6〜 2の範囲にある(表3)。

C鶏卵へのα−リノレン酸の移行効率は、給与量の増加に伴って有意(p< 0.01)に低下し、α−リノレン酸の移行効率は新飼料の配合割合を変数とする1次回帰式(Y= 17.12 − 1.02X)で表すことが可能である(表4)。

[成果の活用面・留意点]
@高付加価値鶏卵の生産に役立てる。


[具体的データ]

  表1 新飼料の飼料成分

 注)@CP:粗蛋白、AEE;粗脂肪
   BCA:粗灰分、CGE:総エネルギー
   DME:代謝エネルギー


  表2 成鶏期の生存率及び産卵率、産卵日量

 注)@試験期間:141〜476日輪まで
   A試験時期:平成4〜5年度


  表3 卵黄中脂肪酸組成とn−6/n−3比の変化

 注)各脂肪酸の数字は、含量割合(%)


   表4 α−リノレン酸の卵黄への移行効率







注)@新飼料のα一リノレン酸含量
  は40.6%である。
  A1%給与時は440日輪、
  その他は260日齢時の成績



[その他]
研究課題名:新飼料(αリノレン酸)による採卵鶏の飼養
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成3〜6年)
研究担当者:福原絵里子、小島雄次、小野晴美、津留崎正信
発表論文等:平成6年度西日本畜産学会講演要旨、平成4〜6年度畜産関係試験成績書