交雑種去勢牛における高品質牛肉生産のための出荷月齢

[要約]交雑種去勢牛の肉質を重視した給与体系においては,23カ月齢以降の代謝エネルギーの総要求量に占める成長・肥育の割合は低下するものの, 出荷月齢が25カ月齢の肉質は肉のきめ・脂肪交雑が優れ,肉質等級「4等級」の出現割合は増加し,粗利益も向上する。

畜産研究所・大家畜部・肉用牛研究室 [連絡先]092-925-5231
[部会名]畜 産 [専門]飼育管理 [対象]家畜類 [分類]普及

[背景・ねらい]

交雑種肥育農家においては,牛肉輸入自由化への対応として高品質牛肉生産が緊急な課題となっている。しかし,交雑種は一般に枝肉成績のバラツキが大きく肥育成績が不安定である。このため,交雑種の肥育特性に合った栄養水準・出荷月齢を解明し,安定した飼養技術を確立する必要がある。そこで,平成元年度より交雑種去勢牛の肥育前期及び後期の飼料エネルギー水準と濃厚飼料構成を検討し,その成果は "県産銘柄牛「福岡牛」の飼い方(県農政部)" に掲載された。
今回は,交雑種去勢牛の肥育過程における飼養成績・枝肉成績を検討し,高品質牛肉生産のための出荷月齢を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@出荷体重は23カ月齢の 687kgに比べ,25カ月齢は 733kgと重くなるが,1kg増体に要したTDN摂取量はわずかに低下する。(表1)
A20カ月齢以降の1日当たりTDN摂取量は25カ月齢まで約 6kgでほぼ一定に推移するものも,代謝エネルギーの総要求量に占める成長・肥育の割合は,23カ月齢から25カ月齢にかけて約10%低下する。(図1)
B23カ月齢以降は脂肪の蓄積が進み,23カ月齢に比べて25カ月齢の肉質は脂肪交雑(BMS No)や肉のきめ等が優れ,ロース芯の脂肪含量も多い。このため市場評価が高い肉質等級「4等級」の出現割合は増加し,粗利益も向上する。(表1,図1,表2)
C血液性状は血糖値が月齢とともに低下する傾向にある。また,内臓所見では23カ月齢に比べ25カ月齢はルーメン粘膜の色がうすく,全頭に膀胱結石が認められる。(表3,4)。

[成果の活用面・留意点]
@県産銘柄牛肉「福岡牛」の産地育成に役立てる。
A肥育期の移行に伴う給与飼料の切り替えには,4週間程度かけて馴致する。
B飼料は "県産銘柄牛「福岡牛」の飼い方" に基づき,乾物TDN水準を 肥育前期(10〜15カ月齢)は75%,肥育中期(15〜20カ月齢)と後期(20カ月齢以降)は80%を用いる。
[具体的データ]

[その他]

研 究 課 題 名:肉質重視型飼料給与体系に対応した適正出荷月齢
予 算 区 分:経常
研 究 期 間:平成8年度(平成6〜8年)
研 究 担 当 者:古賀鉄也,平嶋善典,徳満 茂
発 表 論 文 等:平成7年度畜産関係試験成績書