[要約]
乳用種去勢牛により市場性の高い「B3」規格の枝肉を安定的に生産可能な仕上げ月齢は21カ月齢である。この場合、飼料給与方式は肥育前期-中期後期のTDN水準を低-中-高と段階的に高めていく期別給与が望ましい。
畜産研究所・大家畜部・肉用牛研究室
[連絡先] 092-925-5231
[部会名] 畜産
専門 ] 飼育管理
[対象] 家畜類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
乳用種去勢牛による牛肉生産では、牛肉輸入自由化への対応として良質肉安定生産技術の確立が急がれており、県産銘柄牛肉「福岡牛」の表示対象についても枝肉格付「B3」規格以上の高い品質基準が設定されている。このため、これまでに主に飼料給与技術の面から検討を行い、肥育前期での給与飼料の低エネルギー化、粗飼料増給が産肉性向上に効果があることを明らかにした。今回は、仕上げ月齢(19カ月齢、21カ月齢)と飼料給与方式(2方式)の要因を組み合せ、良質肉安定生産に適した仕上げ月齢と飼料給与方式を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
@仕上げ月齢が19カ月齢から21カ月齢に延びると、市場性の高い「B3」規格に格付けされる枝肉頭数が多くなる(表1)。
A仕上げ月齢の延長により1日増体量やTDN要求率等の飼養効率面での低下傾向がみられ飼料の消費も増大するが、枝肉格付の肉質等級「2」と「3」の間で枝肉単価に大きな格差が生じている近年の状況下においては、1日当たり収支差益は肉質等級「3」に格付けされる枝肉が多い21カ月齢仕上げの方が優れる(表1)。
B飼料給与方式の違いによる1日当たり乾物摂取量及び1日増体量を期別にみた場合、1日当たり乾物摂取量は、前期から中期に移行するとLMHでは増加するが、LHHでは減少する(図2)。このことに伴って、中期の1日増体量はLMHに比べてLHHの方が低くなる傾向がある(図3)。
[成果の活用面・留意点]
@県産銘柄牛肉「福岡牛」の産地育成に活用される。
A肥育期の移行に伴う給与飼料の切り替えの際には 4週間をかけて馴致をおこなう。
[具体的データ]
図1 肥育期の区分、仕上げ月齢及び飼料給与方式
表1 仕上げ月齢と乳用種去勢牛の産肉性 (平成4〜6年)
注)@飼料消費量は風乾物換算の重量
A枝肉単価は平成5年度分の食肉流通統計月報に基づき、B3:934円、B2:763円、
C2:721円として算出
B収支差益={枝肉販売領−(素畜費十飼料費)}÷肥育日数
図2飼料給与方式と期別の乾物摂取量 図3飼料給与方式と期別の1日増体重
[その他]
研究課題名:肥育仕上げ月齢が産肉性に及ぼす影響
予算区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:中島啓介、後藤 治、徳満 茂
発表論文等:平成6年度畜産関係試験成績書