[要約]
専管ふすま混合飼料(TDN水準:前期75%、中期〜後期80%)を給与して、交雑種去勢牛の枝肉成績の向上を図るには、肥育中期〜後期の濃厚飼料に含まれる専管ふすまの混合割合は20%程度にすると良い。
畜産研究所・大家畜部・肉用牛研究室
[連絡先] 092-925-5231
[部会名] 畜産
[専門] 飼育管理
[対象] 家畜類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
交雑種去勢牛は乳用種去勢牛よりも優れた肉質等の資質を持っているが、適切な飼料給与法が確立していないことから枝肉成績が不安定という問題を残しており、肉質向上のための飼料給与技術開発が急がれている。このため、前回までの試験で混合飼料中の
TDN水準は前期75%、中期及び後期80%が交雑種去勢牛の増体などに適していることを明らかにした。今回は、肉質が良くなるといわれている専管ふすまの給与方法を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
@肥育中期〜後期に専管ふすまを濃厚飼料に混合給与すると、中期の飼料摂取量が多く後期における摂取量の低下も少ないため、通算の
TDN摂取量が多くなり仕上げ体重も大きくなる(表 1、表 2)。
A専管ふすまの混合給与により、バラの厚さやロース芯面積が大きくなるとともに、脂肪交雑や脂肪の質等級が向上し、特に、20%混合することにより明かに枝肉成績が向上する
(表 3)。
Bまた、体内で合成される脂質を末梢組織に運ぶとされる密度の低いリポ蛋白成分は、脂肪が最も蓄積するといわれる肥育中期でみると、専管ふすまを混合給与しない場合に比べて大きく増加する(表
4)。
C専管ふすまの混合割合が増えると、第一胃粘膜の色が薄くなる等の傾向にあり、専管ふすまの混合割合は20%程度に抑える(表
5)。
[成果の活用面・留意点]
@県産銘柄牛肉「福岡牛」の産地育成に役立てる。
A飼料の切り替えには 4週間かけて馴致する。
B健康観察を徹底して、尿石症等の異常牛の早期発見と予防に努める。
[具体的データ]
表1 濃厚飼料の原料構成 (現物%)
注)@飼料は混合飼料とし、粗濃比は前期15:85、中〜後期13:88
A肥育前期は10〜13月齢、肥育中期は14〜20ヵ月齢、肥育後期は21〜25月
齢、全期462日間。
B小麦からふすまへの製品歩留は一般ふすま25%、専管ふすま50%。
表2 飼養成績(平成5〜6年)
表3 枝肉成績 (平成6年)
注)@格付評価は日本食肉格付協会による。
表4 20ヶ月齢時血中リポ蛋白成分(平成6年) 表5第1胃絨毛の性状(平成6年)
注)@色は1:黒色〜褐色、2:灰色、
3:薄灰色のピンク。
[その他]
研究課題名:交雑種去勢牛の飼料給与技術
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成5〜6年)
研究担当者:後藤 治、中島啓介、徳満 茂
発表論文等:平成6年度畜産関係試験成績書