泌乳量向上のための第一胃バイパス蛋白質の給与効果

[要約]
 1日当たり乳量35kg程度の泌乳牛に対する粗蛋白質量の姶与は、要求量の100%とし・これを構成する第一胃バイパス蛋白質の割合を40%程度に高めることにより、乳量及び収益性が向上する。

畜産研究所・大家畜部・乳牛研究室  [連絡先]092-925-5232
[部会名]畜産  [専門]動物栄養 [対象]家畜類 [分類]指導
 
[背景・ねらい] 
 乳牛の高泌乳牛化が進む中で、産乳に必要な養分量も大幅に増加しており、これを過不足なく乳牛に摂取させることが難しくなっている。給与飼料中の粗蛋白質(以下CP)は、第一胃内で微生物によって分解消化される蛋白質と、分解を逃れて下部消化管で直接消化される第一胃バイパス蛋白質(以下UIP)に分けられ、CP中に占めるUIP割合の違いによってCPの利用効率が異なり、乳牛の泌乳性や繁殖性に影響するとされている。そこで、給与飼料の粗蛋白質水準とUIPの割合が泌乳に与える影響について検討し、泌乳量向上のための飼料給与技術を確立する。(要望機関名:畜産課、久留米普及(H6)、行橋農林(H8))
 
[成果の内容・特徴]
1 乳量が35kg程度の乳牛に対してTDN75%のTMRを給与する場合、飼料中のCP含量は14.5%(要求量の100%)で、CP中のUIP比率を30%から40%程度に高めると、乳量(FCM)が増加し、収益性が向上する(表1、表3)。
2 乳牛の栄養状態を判定し、飼料中の蛋白質とエネルギーとのバランス指標として利用される血中尿素窒素(BUN)、乳中尿素窒素(MUN)は、CP含量により有意差は認められるがほぼ適正域にある。また、第一胃液性状も同様に適正域にある。(表1、表2)。
3 乳成分はCP含量及ぴUIP比率により差は認められない。 < /DIV>
 
[成果の活用面・留意魚]
1 乳牛に対する効率的な飼料給与の資料として活用できる。
2 バイパス率の計算には、日本飼養標準(1994年版)等の数値を用いる。
3 バイパス率の調整に加熱大豆や魚粉を用いるが、嗜好性が低下することがあるので移行は馴致しつう行う。
4 BUN、及びMUNの適正域はおよそ8〜20r/d1、7〜16r/d1。
 
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:乳用牛の飼料中の第一胃非分解性バイパス蛋白質含量の比率が泌乳に及ぼす影響
予算区分:経常
研究期間:平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者:柿原孝彦、磯崎良寛、原田美奈子、古賀康弘
発表論文等:平成10〜11年度畜産関係試験成績書