キク親株のロックウール耕による採穂期間の拡大と穂の収量性、生産費
[要約]
キクの親株をロックウール耕で養成することにより、慣行の土耕と比較して圃場1平
方メートル当たり採穂数が1.4〜1.7倍に増加する。また、「秀芳の力」では採穂
開始から3ヶ月後でも苗質の低下が小さいことから、親株からの採穂期間の拡大が可能
である。「秀芳の力」の1穂当たり生産費は、8ヵ月間採穂する場合には6.3円で慣
行とほぼ同じである
園芸研究所・野菜花き部・花き花木研究室 連絡先092−922−4111
部会名:園芸 専門:育苗 対象:花き類 分類:普及
[背景・ねらい]
電照ギクの苗生産は、切り花生産者が専用親株を養成し、品種や作型に応じて摘心、
採穂することによって行われている。しかし、慣行の土耕による苗生産では、親株1作
当たりの採穂時期や期間が春夏季の2〜3ヵ月間に限定されることや、親株養成から育
苗までの労働時間が総労働時間の10%を超えることが経営規模拡大の制限要因の一つ
となっている。そこで、秋ギク「秀芳の力」と夏秋ギク「精霊」について、長期間採穂
が可能な親株養成技術を確立するため、ロックウール耕による穂の収量性、苗定植後の
生育および穂の生産費を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1 電照ギクの親株をロックウール耕で養成することにより、圃場1u当たり採穂数
は慣行の土耕と比較して「秀芳の力」では約1.7倍、「精霊jでは約1.4倍に増え
る。特に、「秀芳の力」では採穂開始後の7月と低温期に向かう10月に、また「精霊」
では5月に採穂数が多くなる(図1)。
2 「秀芳の力」の親株のロックウール耕で得られた苗の生育は、露地土耕に比べて
7,8月採穂では差がないが、採穂期間が2ヵ月を超える9月下旬採穂では草丈が長く
茎葉重が重く、苗質が良い(表1)。一方、「精霊」ではロックウール耕と施設土耕の苗
では生育に差がない(データ略)。
3 「秀芳の力」の親株をロックウール耕で養成した場合の1穂当たり生産費は、露
地土耕と比較して、採穂期間が6ヵ月(5〜10月採穂)では7.8円でやや高いが、
8ヵ月(5〜12月採穂)では6.3円で同等である(表2)。
[成果の活用面・留意点]
1 電照ギク産地における苗の省力、大量生産のための技術資料として活用する。
2 キク親株のロックウール耕により苗生産の分業化が図られ、育苗労力の削減が可
能となる。
3「精霊」のロックウール耕による同一親株からの採穂期間は3ヵ月が限度である。
[具体的データ]
[その他]
研究課題名:親株のロックウール耕栽培技術
予算区分:国庫(地域重要)
研究期間:平成9年度(平成8〜9年)
研究担当者:谷川孝弘、國武利治、松井洋、小林泰生
発表論文等:平成8〜9年度園芸研究所野菜花き郎花き花木研究室試験成績書