シクラメンにおける簡易栄養診断のための窒素の測定方法

〔要約]シクラメンの窒素栄養は、葉柄中の硝酸濃度で診断できる。また、葉柄中の硝酸濃度の簡易測定法は、葉柄搾汁液または摩砕液に硝酸試験紙を浸し、発色させた後、坐里箏蔓t圭迷退簑土またはカラースケールで測定する方法が適当である。


生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室 [連絡先]092−924−2939

園芸研究所・野菜花き部・花き花木研究室

[部会名]園芸 [専門]肥料 [対象]花き類 [分類]普及


[背景・ねらい]

シクラメンでは、産地間競争が激しくなる中で低コストで高品質な鉢物の生産が求められている。シクラメンの品質は施肥管理、特に窒素施肥の影響を大きく受けているが、栽培期間が長いため、生産者は経験と勘によって施肥の時期や量を決定しており、これが、品質不安定化の大きな要因となっている。このことから、生産現場で栄養診断をしながら的確な施肥管理を行うことが必要であり、そのための簡易栄養診断技術の開発が求められている。そこで、簡易栄養診断のための窒素の測定方法を確立する。

[成果の内容・特徴]

1 葉柄をにんにく絞り器で絞って得られる葉柄搾汁液および摩砕して測定する葉柄の硝酸濃度は、液肥の窒素濃度および葉身の全窒素濃度と連動しており、窒素の栄養診断および施肥時期の診断の指標値として利用できる(表1)。
2 葉柄の硝酸濃度を簡易に測定するための抽出法としては、葉柄搾汁液を用いる方法が、葉柄を1〜2oに切断後水中で30分間振とう浸出させる浸出法に比べ簡便で精度が高い(図1)。
3 葉柄の硝酸濃度の簡易測定方法としては、葉柄搾汁液および摩砕液に硝酸試験紙を浸し発色させた後、試験紙の発色程度を小型反射式光度計またはカラースケールで読みとる方法が簡易で精度が高い(図2)。小型反射式光度計に比べ、カラースケールで読みとる方法は、測定にかかる費用が安い(40円/回)。

[成果の活用面・留意点]

1 地力保全測定診断の手引きおよび花きの施肥基準に登載し、シクラメンの窒素栄養の簡易診断法として活用する。
2 葉柄の硝酸濃度を測定する場合は、7月頃までは葉柄が小さく、搾汁に必要な量が得られにくいため水を加え摩砕して測定する。
3 小型反射式光度計で測定する場合は測定範囲(5〜225ppm)に入るように希釈して測定する。
4 カラースケールで読みとる場合は、硝酸濃度が100〜500ppmでは読みとり誤差が大きくなるため、100ppm以下になるように希釈する。
5 葉柄搾汁液および摩砕液の硝酸濃度を測定する場合の調査葉はできるだけ若い成熟葉(新生第3〜4葉)で、測定日は当日及び前日の天候が「晴天」の日とする。葉柄の採取時刻は9時から18時までの何れの時刻でも良い。

[具体的データ]

[その他]
研究課題名:花きの養液栽培における簡易栄養診断技術の確立
予算区分:経常
研究期間:平成9年(平成7〜9年)
研究担当者:井上恵子、小林泰生、兼子明、荒木雅登
発表論文等:平成7〜9年度生産環境研究所化学部春夏作試験成績概要書、九州農業研究第59