ぼかし肥料の肥効特性と電照ギクに対する施用効果


[要約]
 好気的に発酵処理したぼかし肥料では、発酵前の有機混合物に比べ総炭素量が減少するとともに、全窒素、無機態窒素濃度が高くなり、 C/N比は低下する。電照ギク栽培圃場における、ぼかし肥料の窒素分解は、慣行の有機配合肥料よりゆるやかに進むが、電照ギクの収量、品質に対する施用効果は慣行と同等である。

生産環境研究所・化学部・作物栄養研究所
園芸研究所・野菜花き部門・花き花木研究室
[連絡先]  092−924−2939
[部会名]  園芸
[専門]    肥料
[対象]   花き類
[分類]   指導


[背景・ねらい]
 福岡県の主要な花き品目である電照ギク栽培においては、「ぼかし肥料」の使用が増加している。ぼかし肥料は、入手し易い種々の有機質肥料・資材を配合して、発酵させた肥料のことで、古くから覧有機物を活用した農家技術として使用されてきた。しかし、現在、生産、販売されているぼかし肥料は作製法がまちまちであり、肥効の発現パターンや作物の生育、収量、品質に及ぼす影響等は明らかにされていない面が多い。そのため、ぼかし肥料の窒素の形態、肥効特性を解明するとともに、電照ギクに対する施用効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@キク栽培で用いられているぼかし肥料は、菜種油粕、魚粕、大豆油粕、肉粕、骨粉等の有機質肥料に米ぬかを混合し、35から20%の水分率で1週間から4週間発酵させた後、乾燥させて作成するものが多い。また、市販されているぼかし肥料の中には、家畜内臓発酵物、蒸製皮革粉、蒸製毛粉、鶏ふん燃焼灰などを材料に用いるものもある。(データ略)

A有機質肥料・資材を混合し好気的に発酵させると、発酵処理前に比べ全窒素、無機態窒素濃度が高くなる。また、総炭素量は減少し、総窒素量がやや増加するため、 C/N比は低下する。(表1)

B有機混合物を発酵処理したぼかし肥料は、30℃、畑状態の土壌中において、窒素の無機化が発酵前のものよりゆるやかに進行する。(表1)

C電照ギク栽培圃場の土壌中におけるぼかし肥料の窒素分解率は、慣行の有機配合肥料より夏期、冬期ともにゆるやかに進む。(表2)

D電照ギクの生育、切り花品質に対する、追肥としてのぼかし肥料の施用効果は慣行の有機配合肥料と同等である。(表3)

[成果の活用面・留意点] 
福岡県花き施肥基準に登載し、ぼかし肥料を施用する場合の資料として活用する。


[具体的データ]

 表1 有機物混合肥料の発酵処理前後の窒素形態およびビン培養法による窒素無機化率(平成5年)

 注)@発酵処理:魚粕、菜種油粕、米ぬかを等量混合し、発酵開始時の水分を40%として
    好気的条件下で15日間発酵させた。
   A窒素無機化率:土壌20gと窒素で20r相当量の肥料を100mlポリビンに入れ、
    最大容水量の60%になるように水を加えた後、アルミフォイルでふたをして、30
    ℃で培養した。その後、経時的に取り出して無機態窒素量を測定した。


 表2 キク圃場におけるぽかし肥料の窒素分解率

 注)@調査方法:ガラス繊維漉紙でつくった円筒の下層に風乾土20g、上層に各肥料5g
    を封入し、埋設用試料とした。試料をキク圃場のマルチ直下に埋設した後、経時的に
    取り出して全窒素濃度、無機態窒素濃度、乾物重を測定し、窒素分解率を求めた。
   A福岡花1号(N−P2O5−K2O,6−7−4)は、油粕、骨粉、IB肥料等を含む
    有機配合肥料、バイオ有機(5.6−7.3−3.0)は内臓発酵物、蒸製皮革粉、
    鶏ふん燃焼灰、毛粉等を原料に、純ぼかし(4−3−3)は菜種油粕、魚粕、骨粉、
    皮革粉、米ぬか、バーミキュライト等を原料にして発酵させたぽかし肥料。


 表3 電照ギクの追肥におけるぽかし肥料の施用効果

 注)@基肥は各区とも福岡花1号を窒素で25s/10a施用した。
   A追肥は、H5年度では10月20日と11月15日、H6年度では12月15日と
    1月12日に施用した。
   B葉の黄化程度:収穫後切り花の茎の部分を水につけて室内に放置し、39日〜46
    日目に黄化程度を評価した。評価基準は0=無〜5=甚の6段階とした。


[その他] 
研究課題名:施設園芸における有機質肥料の効率的施用法 
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成4〜6年) 
研究担当者:井上恵子、谷川孝弘、山本富三、兼子明、末信真二
発表論文等:平成4〜6年度生産環境研究所化学部秋冬作試験成績書