[要約]
フィリペンデュラは、秋冬期に5℃以下の低温に530時間程度遭遇す ることによりロゼット打破され、抽台・開花する。十分に低温遭遇した苗を施設内に定植し、2月上旬から夜間最低気温15℃で促成栽培すると、3〜4月に出荷できる。
園芸研究所・野菜花き部・花き花木研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 園芸
[専門] 栽培
[対象] 花き類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
フィリペンデュラはシモツケソウの仲間で、わが国を含む北半球の温帯〜亜寒帯にかけて原産し、ヨーロッパでは切り花として利用されている。自然開花期は6〜7月で、小輪・白色の花弁をもち、特にフィリペンデュラ・ブルガリスはフラワーアレンジメントとして人気がある。
{県の草花栽培地域では、スターチス、シュッコンカスミソウ等の組合せ品目として期待されるが、本種は宿根草で、秋冬季にロゼット化することから促成栽培が困難な状況である。そこで、ロゼット打破処理の方法や定植後の温度管理について検討し、3〜4月出し促成栽培技術を確立する。
[成果の内容・特徴]
@フィリペンデュラは、秋冬季にロゼット化した後、すぐに加温・電照しても抽台しないが、5℃以下の低温に530時間程度遭遇するとロゼット打破され、100%の株が抽台・開花する(図1)。
A十分な低温に遭遇してロゼット打破された苗を株分け後、施設内に定植し、2月上旬から夜間最低気温を15℃として栽培すると、品質のよい切り花が3月下旬から出荷できる(表1)。
[成果の活用面・留意点]
@本県の草花栽培地域における栽培技術資料として活用する。
A標高の高い地域で苗を養成すると、ロゼット打破のための低温遭遇期間を短縮できる。
B定植後の電照(3時間の暗期中断)は、抽台・開花の促進に有効である。
C収穫後、STS剤の0.2mM液に2〜3時間浸漬すると水生け後の日持ちがよくなる。
[具体的データ]
図1 自然低温遭遇後の加温開始時期と抽台・開花(平成5年)
注)@
A加温は夜間最低12℃、及び深夜3時間の電照
表1 栽培温度と抽台・開花及び切り花形質(平成6年)
注)@自然低温に遭遇させた株を2月6日に入室し、同時に加温開始
A3月31日で調査打ち切り
[その他]
研究課題名:宿根花きの開花調節
予 算 区 分:経常
研 究 期 間:平成6年度(平成5〜6年)
研究担当者:谷川孝弘、小林泰生、松井洋
発表論文等:平成5、6年度園芸研究所野菜花き部花き花木研究室試験成績書