中山間地の冷涼な渓流水を利用した安価な簡易冷房装置の開発

〔要約]
 中山間地域の地域資源である冷涼な渓流水を利用した、簡易な冷房装置を開発した。本装置は資材費が安価であり、運転経費も低コストで環境への負荷は小さく、外気温が30℃前後の時に15〜18℃の渓流水を利用すると、室内温を23℃以下に維持することができる。

八女分場・中山間地作物研究室  [連絡先]0943-43-0292
[部会名]園芸 [専門]育苗 [対象]花き類 [分類]指導
 
[背景・ねらい]
 近年、環境問題への対策の一つとして、水流や風圧などの自然エネルギーを利用して環境への負荷が小さな生産技術への関心力が高まっている。夏季でも冷たい渓流水が豊富に存在する県内中山間地域においては、この地域資源の活用が考えられる。そこで、切り花の苗生産など夏季高温期の健苗育成などのために、渓流水を利用した安価で環境への負荷が小さな簡易冷房装置を開発する。
 
[成果の内容・特徴]
 1 15〜18℃と冷涼な渓流水を利用した冷房装置は、育苗ハウス妻面に設置した木製箱の内部に濾材を立てて並べ、これを渓流水で濡らして箱内空気を冷却し、その冷気をダクトファンで育苗ハウス内の育苗室に導くことで室温を低下させる(図1)。育苗ハウスは遮光率約50%の資材で外側を被覆する。
 
1 渓流水利用の簡易冷房装置は、一般に市販されている材料を用い、特別な技術や知識を必要とせずに製作可能で、製作経費は21.6万円と冷房機こ比べて1/2以下と安価である(表1)。また、軽量のため運搬及び設置ともに容易である。
 
3 渓流水利用の簡易冷房装置から95m/mの風量で冷気を容積約144m(面積90u×平約高1,6m)の育苗室内に送り込むことにより、外気温が30℃前後の時に育苗室内を23℃以下に維持することができる(図2)。
 
2 この冷房装置をトルコキキョウの育苗に用いると、電力消費景が冷房機使用の場合に比べ、約3分の1と少なく(表2)、利用した渓流水は再び元の渓流に戻すため、環境へ負荷は極めて小さい。
 
[成果の活用面・留意点]
1 夏季高温期でのトルコギキョウなど花苗の健苗育成に利用できる。
2 この冷房装置の置場所は、冷房育苗が必要な夏季に、水温15〜18℃の安定した水量の渓流水を確保可能で、さらに、ファン用の電気が得られる場所とする。
3 育苗室内の苗へのかん水は、冷房に利用する渓流水のパイプを分岐して室内に導き、落差圧を生かして電池式電磁弁による定時的な無人散水を行うことが可能である。
4 育苗ハウス上の遮光資材は、曇雨天時には日中でも除去できるものにすることが望ましい。
 
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:山間地に適する花き類の選定と作型開発
予算区分:県特
研究期間:平成10年度(平成7年〜10年)
研究担当者:執行明久・月時和隆・成清潔・大賀康之
発表論文等:平成7〜10年度八女分場中山間地作物研究室試験成績概要書