[要約]
ナスの低温障害は、湿度を高く保つことにより抑制できる。ナスをポリエチレンフィルム内装段ボール容器か、有孔ポリプロピレンフィルムで包装後段ボール容器に入れると、湿度を高く保つことができ、0℃で貯蔵した場合でも5日間は低温障害を抑制できる。
生産環境研究所・流通加工部・流通利用研究室
[連絡先] 092−924−2939
[部会名] 園芸
[専門] 加工利用
[対象] 果菜類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
収穫後のナス果実は、外気温が凍結点以上であっても、ピッティングなどの低温障害が現れ、商品性が著しく低下する。そこで、湿度保持による収穫後のナス果実の低温障害抑制方法を確立する。
[成果の内容・特徴]
@湿度を高く保つとピッティングの発生を抑制できる(表1)。
Aナスをプリメラ紙内装段ボール容器(従来の出荷形態)に詰めた場合、湿度は低くなり、ピッティングが貯蔵
1日後より発生する。ナスをポリエチレンフィルム(PE)内装段ボール容器か、有孔ポリプロピレンフィルム(OPP)で包装後段ボール容器に詰めた場合、湿度を約97%以上に保つことができ、これによりピッティングの発生を抑制できる(表2)。
Bナスの呼吸速度は低温ほど抑制され、アレニウスプロットの転換点から推測すると、呼吸代謝に異常が認められる品温は約8℃である。
[成果の活用面・留意点]
@ナスの低温障害抑制技術として活用できる。
Aナスをポリエチレンフィルム(厚さ0.03mm)袋に入れて密封すると、袋内が低酸素状態となる場合があるため、ハンカチ折り包装とする。
B低温障害の発生の可能性がある温度域は8℃以下である。
[具体的データ]
表1 湿度条件がピッティングの発生程度に及ぼす影響(平成5年)
注)@数値は平均±標準偏差 A貯蔵温度は0℃。
Bピッティングの程度は、小さなピッティングが0〜2個ある状態を0,3〜6個
ある状態を1,7〜10個ある状態を2、大きなピッティングが目立つ状態を3、
大きなピッティングがかなり目立つ状態を4、表皮の半分以上にピッティングが
発生している状態を5とした。
表2 出荷資材がナスの低温障害に及ぽす影響(平成6年)
注)@数値は平均±標準偏差 Aピッティングの程度は表1に準ずる
図 1貯蔵温度がナスの呼吸量に及ぼす影響
(アレニウスプロット)(平成6年)
注)ナスを密閉式円柱形アクリル製容器に入れ、
一定時間内に変化する容器内の二酸化炭素
濃度から呼吸速度を算出した。この呼吸速
度の自然対数値
研究課題名:ナスの低温障害防止技術
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:池田浩暢、茨木俊行
発表論文等:平成4〜6年度福岡県農業総合試験場 生産環境研究所 流通加工部試験成績書