[要約]
いちごの親株を地上150cmの高さに設置した断面積120cm2程度の少容量栽培槽に植え付け、ランナーを下方に垂らす高設親株床において、棚式育苗システム用の小型ポットで採苗することにより、従来の親株床に比べて親株数や親株床面積が大幅に低減できかつ徒長の少ない揃った子苗が確保できる
園芸研究所・野菜花き部・野菜品種研究室
[連絡先] 092-922-4111
[部会名] 園芸
[専門] 栽培
[対象] 果菜類
[分類] 普及
[背景・ねらい]
慣行のいちご採苗では、親株1株当たりの採苗数が10株程度であることから、本圃10aに要する親株数は800株と多く、そのため親株床面積は本圃面積に対して約6割程度もの広さが必要となる。
少ない親株床面積で効率的ないちご苗生産を図るためには、ランナーを下垂させることによって畝幅が少なくなり、しかもそろった子苗が大量に得られる高設親株床と小型ポット利用による採苗の組み合わせが考えられる。
そこで、標準的な採苗時期の6月上旬に親株1株当たり40本以上の子苗を得るための、高設親株床の栽培槽の大きさ、親株の冷蔵の有無及び培土の複数年利用の可否について明らかにする。
[成果の内容・特徴]
@高設親株でランナーを空中に下垂させた状態で子苗を発生させることにより、慣行に比べて発生次数に関わらず徒長の少ない揃った苗が確保できる(表1)。この方式では、必要な親株数が1/4と大幅に少なくて済む(図1 試算)。
A親株の植え付け間隔は25cmとする(図1 試算)。また、栽培槽の下に張ったネット(防鳥網)に小型ポットを固定することにより、鉢受け方式による採苗が楽な姿勢でできる(図1)。
B断面積が120cm2程度の大きさの栽培槽でも親株1株当たり40本以上の苗を採苗できる(表2)。
C親株の冷蔵処理の有無に関わらず親株1株当たり40本以上の苗を採苗できるが冷蔵処理では子苗数がより多くなる(表3)。
D利用2年目の培土でも十分な数の子苗が採苗できるが、初年目の培土が苗数がより多くなる(表4)。
[成果の活用面・留意点]
@いちご棚式育苗システム利用の手引きに掲載し、安定生産技術確立の資料として活用する。
A親株は小型ポット専用培土を入れた樋に植え付け、ランナー発生が始まる頃に雨よけハウス内へ搬入する。
B鉢受け後は数日おきに小型ポットへ直接散水し、子苗の発根、活着を促す。
Cタイマー等を利用した自動かん水方式の利用により、省力的な親株床の栽培管理ができる。
[具体的データ]
必要な面積や資材の試算概要(10a当たり)
・親株床面積 30u (慣行親株:600u)
・培土量600リットル 120p2×50m
専用培土利用(2年目の培土も使用可)
・その他必要な資材 栽培槽、高設架台、
防鳥網(編み目の1辺3p、長さ50m分)
試算根拠
親株数=必要苗数(8,000株)÷40本(親
株1株採苗数)=200株、栽培槽1m当たり採
苗可能な小型ポット数=160本、親株床に必要
な栽培槽の長さ=8,000株÷160(株/m
)×50m 親株床の面積50m×0.6m=30u
図1 高設親株床の概要
表1 子苗の発生次数と草丈(平成6年)
表2 裁培槽の種類と子苗発生数(平成6年)
注)@有意差検定:n.s.;有意差なし
**;1%水準で有意差あり(表3,4も同じ)
A栽培概要:栽培槽への植え付け;1月20日、
無加温温室搬入;3月20日(表3,4も同じ)
表3 親株冷蔵と子苗発生数(平成6年)
注)@冷蔵処理:9月30日〜10月
30日、2.5℃
表4 培土の使用年数と子苗発生数(平成6年)
注)@培土:棚式育苗システム専用培土
[その他]
研究課題名:イチゴ超省力生産システムの開発
予算 区分:県特
研究 期間:平成6年度(平成4〜7年)
研究担当者:伏原 肇、三井寿一
発表論文等:平成7年度園芸研究所野菜花き部野菜品種研究室試験成績書