準奨励品種候補小麦「ニシホナミ」の品種特性


[要約]
  小麦「ニシホナミ」を一般平坦地〜平坦肥沃地を対象に準奨励品種として採用。「ニシホナミ」は「農林61号」に比べて成熟期が1日から2日程度早い中生種で、短稈で、耐倒伏性に優れ、小麦縞萎縮病に強く、収量は多収で千粒重は軽いが製めん適性に優れている。

農産研究所・栽培部・作物品種研究室
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豊前分場・普通作物・野菜研究室
[連絡先]09302-3-0163
筑後分場・普通作物研究室
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[部会名]    農産
[専門]     育種
[対象]     麦類
[分類]     普及


[背景・ねらい]
 現在、麦作付面積の確保及び高品質麦の生産拡大を図るために需要度の高い優良品種の作付け推進が重要な問題となっている。
 このような背景において、耐倒伏性が優れ、小麦縞萎縮病に強く、製めん適性の優れた小麦の多収品種の育成・普及が農家及び関係機関から強く望まれている。
 「ニシホナミ」はこれらの条件を満たした極めて有望な系統である。よって準奨励品種に採用することにより、農家の栽培意欲を高め、本県麦作の振興を図る。

[成果の内容・特徴]
  「ニシホナミ」(交配親:関東107号/ミナミノコムギ)は「農林61号」に比べて次のような特性を有する。

@白ふで、出穂・成熟期は1日〜2日程度早い中生種である。

A稈長は12〜14cm程度短く、穂数はやや多い。

B耐倒伏性は強、穂発芽性は難である。

C小麦縞萎縮病抵抗性は強、うどんこ病、赤かび病抵抗性は同程度である。

D粒形はやや長く、粒色は褐色であるがやや黒みがかっている(整粒硬質粒)。

E収量は多収で、特に、圃場の肥沃度が高い圃場において収量が優れる。

F千粒重は軽く、検査等級は同程度である。

G製粉特性、製めん適性は優れ、特に粉の白度が高く、うどんの粘弾性が優れる。

[成果の活用面・留意点]
@「ニシホナミ」を準奨励品種に採用し、農林61号に替えて県下一般平坦地〜平坦肥沃地に普及を図り、麦作振興に寄与する。

A地力の低い圃場では穂数が確保しにくいので地力の高い圃場で栽培する。

B千粒重が軽いので作土深の確保と有機物の施用された地力の高い圃場で栽培する とともに、排水対策を徹底することにより千粒重の向上を図る。

C赤かび病に弱いので出穂・開花期に赤かび病の防除を徹底する。


[具体的データ]

                    表1  生育、病害及び収量

  注)@数値:平成3〜6年度の平均値。
    A障害の多少:0(無)〜5(甚)の6段階で表示。
    B播種時期:農産研究所11月24日、豊前分場11月25日、筑後分場11月19日。
    C施肥量(N成分s/10a、基肥十1追十2追):農産研究所、豊前分場4.5+2.5+2、
     筑後分場5+4+2。


                   表2 製粉特性及び製めん適性

  注)@産地:福岡県農業総合試験場農産研究所。
    A分析:九州製粉懇話会技術研究会。
    B数値:平成3〜5年度の平均値。


     表3 圃場の肥沃度、施肥量と精麦重

   注)農産研究所。




 図1 ニシホナミの年次別検査等級
  1)▲:平成4年、■:平成5年
    ▼:平成6年
  2)検査等級:1等上(1)〜2等上(4)〜
     規格外A(7)〜規格外C(9)


[その他]
研究課題名:麦類奨励品種決定調査
予算 区分:国庫(種子法)
研究 期間:平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:松江勇次、尾形武文、大隈充子、松尾太、住吉 強
発表論文等:なし