二条大麦新品種候補「ミハルゴールド」の育成


[要約]
  ビール醸造用二条大麦の新品種候補「ミハルゴールド」はあまぎ二条に比較して、縞萎縮病とうどん病に抵抗性を持ち、耐湿性がやや強く、穂発芽性はやや難である。また、多収で、麦芽品質は安定して優れる。

農産研究所・二条大麦育種研究室
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連絡先]   092-924-2937
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部会名]   農産
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専門]    育種
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対象]    麦類
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分類]    普及


[背景・ねらい]
  わが国の主要な麦作地帯である北部九州において、ビ−ル大麦は麦類の中では早生で水稲との作期の競合が少ないため、土地利用型作物として重要な位置を占めている。しかし現在、福岡県の基幹品種であるあまぎ二条は、大麦縞萎縮病に弱く常発地帯での栽培が出来ず、また近年腹粒や湿害の発生により、外観品質が低下している。このため、大麦縞萎縮病に強く、熟期が早い「アサカゴールド」への転換を図っているところである。しかし、アサカゴールドはうどん病に弱いため、県下全域をカバーすることは困難である。このため、大麦縞萎縮病・うどん病の複合抵抗性を持ち、耐湿性が強く、強稈で、整粒歩合が高く、被害粒の発生が少なく、醸造品質の優れた多収品種が待ち望まれている。
 このような生産者や実需者の強い要望に応えるため、醸造品質が優れ、病害抵抗性、障害抵抗性、多収などを兼ね備えた品種育成を目標とした。

[成果の内容・特徴]
  本品種は「(大系H804/Spartan)F1//栃系157」の組合せから育成された醸造用二条大麦品種である。 あまぎ二条と比較して次のような特徴をもつ。

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出穂期、成熟期は同程度かやや遅く、アサカゴールドに比べてそれぞれ2日遅い。

A
稈長と穂長はやや短く、穂数はやや多い。

B
大麦縞萎縮病とうどん病はともに強い。赤かび病は同程度である。

C
耐倒伏性はやや強い。耐湿性はやや強く、穂発芽性はやや難である。

D
粒形は細長く、粒色は黒褐色である。

E
側面裂皮粒は微程度発生するが、凸腹粒の発生は少ない。

F
多収で、整粒歩合が高く、大粒である。

G
検査等級はやや優れ、アサカゴールドと同程度である。特にちりめんじわが多い。

H
醸造用麦芽品質は麦芽エキスとジアスターゼ力が特に優れ、総合評点も安定して優れる。

[成果の活用面・留意点]
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準奨励品種に採用。

A
大麦縞萎縮病・うどん病の常発地帯の「あまぎ二条」に替えて普及を図る。

B
穀皮が薄いので、剥皮を生じないよう脱穀調製に十分注意する。

C
極端な早播は外観品質の低下を招き、極端な晩播は成熟期の遅れを招くので、適期播種に努める。


[具体的データ]

   表1 「ミハルゴールド」の特性


[その他]
研究課題名:高醸造適性・多収・耐病性品種の育成
予算 区分:国庫(指定試験)
研究 期間:平成6年度(昭和56年度〜平成6年度)
研究担当者:吉川 亮、吉田智彦、伊藤昌光、浜地勇次、古庄雅彦、水田一枝、山口 修、吉野稔、篠倉正住
発表論文等:新品種決定に関する参考成績書 二条大麦「ミハルゴールド」