麦類貯蔵種子の栽培特性と収量性

[要約]
 麦類の短期貯蔵種子(1年5カ月)の栽培特性収量性は、当該年産種子(5カ月)と同程度で、貯蔵種子の発芽率が80%以上であれば種子としての適格性を具備しており、実用上問題はない。

 農産研究所・栽培部・作物品種研究室  [連絡先]092−924−2848
 [部会名]農  産   [専門]育種 [対象]麦類   [分類]行政
 
[背景・ねらい]
 採種計画上または気象災害等により1年もしくは数年間、貯蔵された種子を使用することがある。麦類の貯蔵種子の適格性については、発芽力と出芽率のみで検討したものが大部分で、生育ステージ及び収量性まで含めて検討した報告はない。そこで貯蔵期間が異なる場合の発芽率が80%以上である麦類種子の栽培特性及び収量性を検討し、貯蔵種子の適格性を明らかにする。
 
[成果の内容・特徴]
 1 麦類の貯蔵期間と出芽後3カ月の生育との間には一定の関係は認められず、出芽後3カ月の生育に対する貯蔵期間の影響はない。一方、株の乾物重に対しては種子千粒重が影響を及ぼしており、種子千粒重が重い生産年の種子は株の乾物重が重い(n=12,r=0.663*)(表1)。                                          
 2 短期貯蔵種子(1年5カ月)の出穂期、稈長、穂長、穂数は当該年産種子(5カ月)に比べて有意な差は認められず、同じ生育特性を示したが、長期貯蔵種子(9年5カ月〜15年5カ月)では出穂期の変動と稈長が短くなり、穂数が少なくなる品種が認められる  (表1)。                                                          
 3 収量構成要素、収量及び検査等級において、短期貯蔵種子が当該年産種子に比べて有意な差で劣ることは認められないが、長期貯蔵種子ではu当たり穂数が減少し、千粒重が軽くなって収量が劣る品種が認められる(表2)。            
[成果の活用面・留意点]
 1 採種技術指針に登載し、良質種子生産技術のための知見として活用できる。
 
[具体的データ]
 
[その他]
 研究課題名:水稲・麦・大豆の純度維持並びに増殖及び採種法改善
 予算区分:経常
 研究期間:平成10年度
 研究担当者:松江勇次、佐藤大和、内村要介
 発表論文等:平成10年度 福岡県農業総合試験場作物部会冬作試験成績概要書