福岡県農業総合試験場研究報告17(1998) pp 97 - 101
露地栽培ナスの総合的害虫管理におけるイミダクロブリド粒剤の有効利用
嶽本弘之・大野和朗・益永輝幸
(生産環境研究所)
[摘要]ミナミキイロアザミウマの土着天敵ヒメハナカメムシ類を利用した露地栽培ナスでの総合的害虫管理において、イミダクロプリド粒剤を鉢上げ時あるいは定植時に処理し、ワタアブラムシに対する防除効果とハダニ類、アザミウマ類およびヒメハナカメムシ類の発生に及ぼす影響を検討した。ワタアブラムシは無処理区で6月下旬と7月下旬に高密度になったが、粒剤処理の両区では低密度で推移した。ハダニ類の密度には処理区間に有意差はなく、粒剤処理によるリサージェンスは認められなかった。アザミウマ類の密度は粒剤処理の両区では無処理区に比べて7月上旬まで低かったため、ヒメハナカメムシ類の定着がやや遅れた。しかし、粒剤処理にかかわらずアザミウマ類の密度は7月中旬に急激に増加したのに伴い、ヒメハナカメムシ類の密度は7月下旬にピークに達し、その後アザミウマ類の密度は急激に低下した。アザミウマ類の中では土着のネギアザミウマとダイズアザミウマが優占的に発生し、ミナミキイロアザミウマの発生は少なかった。イミダクロプリド粒剤の土着のアザミウマ類に対する残効期間はミナミキイロアザミウマに比べて短いため、粒剤処理はアザミウマ類を主要な餌とするヒメハナカメムシ類の定着と増殖に影響しなかったと考えられる。以上のことから、土着のアザミウマ類が優占的に発生する地域では、イミダクロプリド粒剤の鉢上げ時または定植時処理は露地栽培ナスでの総合的害衷管理におけるアブラムシ類に対する有効な防除法であると考えられる。
[キーワード:総合的害虫管理、ヒメハナカメムシ類、アザミウマ類種構成、イミダクロプリド、ハダニ類、リサージェンス]
Effective use of imidacloprid granules as a compatible chemical with integrated pest management programs in eggplant fields. TAKEMOTO Hiroyuki, Kazuro OHNO and Teruyuki MASUNAGA (Fukuoka Agricultural Research Center, Chikushino, Fukuoka 818-8549, Japan) Bull. Fukuoka Agric. Res. Cent.,17: 97 - 101 (1998)
[Key word : IPM, Orius spp, thrips species composition, imidacloprid, spider mites, resurgence]