福岡県農業総合試験場研究報告17(1998) pp 87 - 91
イチゴうどんこ病の育苗期での発病消長と育苗期高温処理による発病抑制
益永輝幸・池田 弘1)・大野和朗・緒方清春2)・増永哲也2)
(生産環境研究所)
[摘要]育苗期でのイチゴうどんこ病の発病消長を明らかにするとともに、育苗期での高温処理が本病の発病消長に及ばす影響を調査し、物理的防除法としての高温処理の有効性を検討した。発病消長調査の結果、6月上中旬から発病が促進され、7月中旬に発病のピークとなった後、夏季の高温により抑制された。その後、8月下旬には上位2複葉での発病はほとんど認められなかったが、下位には発病葉が認められた。発病株を恒温条件に置き、イチゴうどんこ病の発病消長を調査した結果、20℃および25℃では発病が継続したが、35℃では8週後に、35℃では6週後に上位4複葉での発病が認められなくなった。そこで、発病した苗をガラス室に置いた高温処理区と露地で育苗する無処理区を設け、発病消長を調査した結果、高温処理区では無処理区に比べ発病が抑制され、約10日早く終息した。ただし、試験を行った1996年は夏季が高温であったため無処理区でも発病が抑制され、8月中旬には両区での発病の差はほとんど認められなくなった。以上の結果から、育苗期での高温処理により本病の発病を抑え、本圃への感染源の持ち込みを防止できると考えられる。
[キーワード:イチゴうどんこ病、発病消長、高温処理、感染源]
Incidence of strawberry powdery mildew during nursery stage and its control with high temperature treatment. MASUNAGA Teruyuki, Hiroshi IKEDA, Kazuro OHNO, Kiyoharu OGATA and Tetsuya MASUNAGA (Fukuoka Agricultural Research Center, Chikushino, Fukuoka 818-8549, Japan) Bull. Fukuoka Agric. Res. Cent.,17: 87 - 91 (1998)
[Key word : strawberry, powdery mildew, Sphaerotheca humuli, high temperature treatment]
1)農業技術課、2)病害虫防除所