福岡県農業総合試験場研究報告17(1998) pp 62 - 67
早植イグサの初期生育抑制法が生育、収量、品質に及ぼす効果
藤冨慎一・内村要介・森藤信治1)・住吉 強
(筑後分場)
[摘要]普通刈栽培イグサの植付時期は、従来12月上旬であったが、最近になり11月上旬に早進化した。その結果、活着後の高温により初期生育が旺盛となり、後期生育が劣り、収量・品質の低下が問題となっている。そこで筆者らは、植付時期の早進化に対する初期生育抑制技術について明らかにした。
1 基肥窒素量を標準量(N:6s/10a)の半量にすると、初期生育抑制効果はみられたが、冬期低温年の場合、5月上旬の第1回追肥前の窒素吸収量が少ないため先刈期後の生育が劣り、収量・品質は低下した。
2 密植(34.6株/u)にすると、初期生育が旺盛になった。また、疎植(23.0株/u)にすると初期生育抑制効果がなく、やや減収した。そのため、栽植密度は標準植(28.0株/u)が適当である。
3 基肥窒素標準量で、植付株の大きさを標準株苗(基数:7〜8本/株)の半分の小株苗(茎数:3〜4本/株)にすると、初期生育抑制効果が認められるとともに、地下部が充実し、先刈期後の生育が良好となった。その結果、120cm以上の茎の収量増加、および先枯歩合、変色茎数率の低下による品質向上が認められた。
以上のことから、普通刈栽培イグサを早植えする場合、基肥窒素は標準量、栽植密度は標準植、植付株は小株苗にする。
「キーワード:イグサ、初期生育抑制、基肥窒素量、栽植密度、植付株の大きさ]
Effects of the Inhibiting Cultivation Methods for the Premature Growth on Growth, Yield and Quality on the Early Planting Mat Rush. FUJITOMI Shinichi, Yosuke UCHIMURA, Nobuharu MORIFUJI and Tsuyosi SUMIYOSHI (Fukuoka Agricultural Research Center, Chikushino, Fukuoka 818-8549, Japan) Bull. Fukuoka Agric. Res. Cent.,17: 62 - 67 (1998)
[Key word : Mat Rush, inhibiting of the premature growth, amount of basal nitrogen applied, planting density, size of planting hill]
1)現北筑前農業改良普及センター