福岡県農業総合試験場研究報告17(1998) pp 53 - 56
 
福岡県に分布するオオムギ斑葉病菌の感染好適温度と生育温度
松本幸子1)・野口保弘
(生産環境研究所)
 
[摘要]オオムギ斑葉病の発生は、福岡県病害虫防除所の調査で発病圃場率が1996年は0〜1%であったが、1997年は31.6%と高く、県内各地で多発したので、多発要因を大麦の播種時の気温と発病との関係から検討した。発病株率は、発芽時の温度条件により大きく左右され、播種時期が遅くなり、気温が低下するに伴い高くなった。また、感染好適の日平均気温は5〜7.5℃と従来の報告とは異なり、日平均気温が10℃を越えると発病株率は低下した。そこで、本県内の発病圃場から採種した種子及び本病分離菌株を供試し、本病の感染発病に及ばす温度の影響について検討した。発病圃場から採種した種子の発芽までの温度及び種子に対する菌接種時の処理温度と発病との関係は、いずれも発病は5℃〜7.5℃で最も多く、10℃を越えると減少した。また、本県内で分離した菌の生育可能最低温度は、2.5℃であり、1960年に益尾が供試した菌(対照菌)の10℃と比べ、より低温で生育した。以上のことから、オオムギ斑葉病が本県で多発したのは、種子消毒の不徹底とともに、従来より低温で生育、感染できる菌が分布し、この菌の感染好適温度が、大麦の播種時期の温度条件と一致したことも一因ではないかと推察された。
[キーワード:大麦病害、オオムギ斑葉病、温度]
 
 Relation between temperature of seeding period and barley leaf stripe disease,caused by Drechsiera graminea. MATSUMOTO Sachiko and Yasuhiro NOGUCHI (Fukuoka Agricultural Research Center, Chikushino, Fukuoka 818-8549, Japan) Bull. Fukuoka Agric. Res. Cent.,17: 53 - 56 (1998)
[Key word : barley diseases, Drechsiera graminea., temperature]
 
1)病害虫防除所
 
全文 (full text ) (pdf 550KB)
 
目次へ戻る  back to contents