福岡県農業総合試験場研究報告17号(1998) pp 36 - 42
水田利用方式の違いによる大規模稲作経営の課題と展開方向
第1報 作業構造と収益性・生産性
中原秀人・今林惣一郎1)・大隈光善2)・藤吉 臨
(企画経営部)
[摘要]福岡県内の大規模稲作経営の地域性と水田利用方式の関連を明らかにするため、水田利用方式の異なる大規模稲作経営(2戸)を分析素材に、作業構造と収益性、生産性を検討した。福岡県内の大規模稲作経営は、県北部水稲単作地域に多く、県南部稲麦二毛作地域に少ない。県北部の単作型大規模稲作経営では、水稲の作型や品種の分散によって、品種に応じた適期作業や稠密な作業管理が行われ、水稲に特化した規模拡大によって高い収益性を確保していた。現在、福岡県の良食味見種が極早生種に偏っていることや、二毛作地域より地代が低いことも収益確保に有利に働いていた。県南部の二毛作型大規模稲作経営では、地域的な水利慣行による制約から水稲の作型分散が難しく、春の労働ピークが激しい。そこでは作業の遅れや、能率重視の作業となる傾向がみられた。その結果、稲麦二毛作によって土地生産性は高いものの単収の低下を招き、労働生産性、水稲の収益性は低かった。したがって、福岡県の大規模稲作経営は、県北部では単作型大規模稲作経常によって規模拡大が進みやすく、県南部の二毛作型大規模稲作経営では規模拡大の条件が厳しい。
[キーワード:水田利用方式、大規模稲作経営、水稲単作、稲麦二毛作、作業構造]
Problems and developmental prospects for Large-scale Rice Farming Based on Different Paddy Utilization Systems. (1) Working System, Profit, Productivity. NAKAHARA Hideto, Souichirou IMABAYASHI, Mituyosi OKUMA and Nozomu FUJIYOSHI (Fukuoka Agricultural Research Center, Chikushino, Fukuoka 818-8549, Japan) Bull. Fukuoka Agric. Res. Cent.,17: 36 - 42 (1998)
[Key word : paddy utilization system, large scale rice farming, rice single crop, rice-wheat(barley)crop, working system]
1)農産研究所、2)生産環境研究所