福岡県農業総合試験場研究報告14（1995）　pp 194 - 198

鶏凍結保存精液からの限外濾過によるグリセロール除去が精子に及ぼす影響

西尾祐介・小島雄次・小野晴美

　
　鶏精液の凍結保存に耐凍剤として用いるグリセロールを融解精液から除去する方法として限外濾過法を応用した場合のグリセロール除去後の受精率と，限外濾過が精子の形態と運動性に及ぼす影響を調査した。
　６．７％のグリセロールを合むＬａｋｅ液を限外濾過した結果，２時間以上濾過を行っても濃度２．２％以下にはグリセロールを除去できなかった。６．７％のグリセロールを含む新鮮精液を，濾過開始前に予備希釈によってグリセロール濃度を３．３％に下げることにより，約２時間の濾過でグリセロールは受精可能な０．５％まで除去された。グリセロール除去後の受精率は７９．７％と高く，精子性状の変化も少なかった。次に６．７％のグリセロールを含む凍結精液を融解し，グリセロール濃度を３．３％まで予備希釈した後限外濾過した結果，受精率は段階希釈法によってグリセロールを除去した場合の３０〜５０％に比絞して１２〜１６％と低かった。また濾過後の融解精子の大部分が破壊されている様子が観察された。この結果から限外濾過法によるグリセロール除去は融解精子に与える物理的ダメージが段階希釈法より強く，精子の破壊と受精率の低下を招くことが示された。これを改善するためには限外濾過中に起こる浸透圧衝撃及び加圧，撹絆によるストレスの低減が必要である。