簡易な手法による牛の低ランク受精卵の受胎率向上技術
畜産研究所
1 背景、目的
牛から受精卵を採取すると、正常に発育する良質の受精卵のみでなく、発 育が遅延したり、細胞の一部が遊離・変性した受精卵(以下、低ランク受精卵という。)が2割程度採取されます。この低ランク受精卵は凍結による長期保存に耐えられないため、採取後直ちに移植できる受卵牛がいない時は廃棄せざるを得ません。
そこで、このような低ランク受精卵を有効に活用するために、低ランク受精卵が凍結に耐えられるように改善し、凍結後の移植においても受胎率が向上する技術を確立しました。
2 成果の概要、特徴
1)市販の使い捨て注射針および注射筒の針基部を接着し、 23Gの注射針と針カバーを装着した簡易で非常に安価な受精卵操作器具を開発しました
(写真1)。
2)簡易操作器具を用いると、実体顕微鏡下で、短時間に低ランク受精卵の透明帯の切開や変性部除去などができ(写真2、表1)、培養後の凍結保存が可能となります。
3)この方法により、遊離・変性した細胞を除去して凍結した低ランク受精卵の受胎率は、良質受精卵と同程度の約50%まで向上します。
3 主要なデータなど