キウイフルーツ果実軟腐病菌の感染時期の
解明と完全世代の発見



生産環境研究所



1背景、目的

 本県は全国第2位のキウイフルーツの生産県ですが、貯蔵中に果実軟腐病が発生し大きな問題となっています。この病気に関与する菌としては、これまでは果実軟腐病菌の完全世代が発見されていなかったので、分類学上、不完全菌類のDothiorella sp.及び Phomopsis sp.の2種類とされたままでした。このことから、生態研究の対象も不完全世代のみにとどまっていたことから生態的に不明な点もあり、このため効果の高い防除の時期もわかっていませんでした。
 そこで、両菌の完全世代を探索し分類学的位置を明確にするとともに、本病の主要な感染時期及び感染方法を明らかにしました。

2成果の概要、特徴

 1)キウイフルーツの枯死枝上から、果実軟腐病菌(Dothiorella sp.及び Phomopsis sp.)のものと考えられる子のう殻を初めて発見しました。これらの子のう菌の形態的特徴及び本子のう菌由来の柄胞子の形態的特徴及び病原性より、今回発見された子のう菌を果実軟腐病菌の完全世代と判定し、それぞれBotryosphaeria dothidea(不完全世代:Dothiorella sp.)及び Diaporthe eresもしくはmedusaea(不完全世代:Phomopsis sp.)と同定しました。

 2)これら2種類の菌の接種試験により、Botryosphaeria dothidea菌による果実への感染は6〜7月に無傷で起こること、Diaporthe eresもしくはmedusaea菌による果実への感染は無傷では起こらず、9〜10月に傷がついた部分から感染することが判明しました。

 3)キウイフルーツ果実軟腐病菌は風媒伝染能力のある有性世代(子のう胞子)を剪定枝や巻きひげ等の枯死枝内に作るので、これらを国外に持ち出すことで菌密度を減らすことができます。


3 主要なデータなど


写真 1 果実軟腐病菌(Diaporthe eresもしくはD.medusaea)の
      子のう及び子のう胞子

写真 2 果実軟腐病菌(Botryosphaeria dothidea)の
      子のう及び子のう胞子


表 1 Botryosphaeria属菌の感染時期

注) 1 平成6年6月1日に全区被袋
   2 接種源は磨砕菌糸で無傷接種
   3 無接種は全期間有袋


表 2 Diaporthe属菌の感染時期

注 1平成7年6月6日に全区被袋
  2 接種源は柄胞子で有傷接種
  3 無傷接種では全期間発病せず
  4 無接種は全期間有袋