最近、高付加価値米の一つとして、有機栽培米の生産が注目されており、その中で菜種油粕は安価で取り扱い易いことから、盛んに用いられています。しかし、基肥全量を菜種油粕で施肥すると、土壌の還元化が起こりやすく、それに伴う生育障害物質の発生で稲の初期の生育が不良になりやすいという問題点があります。そこで、窒素の全施肥量を粒状菜種油粕で施用する場合の施用時期や施用量、水管理法について明らかにしました。
1)基肥に粒状菜種油粕だけを施用する場合の施用量は化学肥料を施用しなかった場合の窒素量の 1.4倍とし、移植7日前に施用します。
2)追肥に粒状菜種油粕だけを用いる場合の施用量は化学肥料を施用しなかった場合の窒素量と同量 で、慣行1回目より7日前に全量を1回で施用します。
3)水管理は、移植後から中干し時期まで1〜2pの浅水で管理すると、菜種油粕の分解に伴う土壌の 還元化が改善され、慣行(全量化学肥料)とほぼ同等の水稲の収量、品質、食味が得られます。
4)この施用法は、砂壌土で日減水深2〜3p程度の水田土壌に適用できます。
5)この施用法では、最高分げつ期から8月中旬までの葉色が濃く推移し、成熟期の穂数やm2当たり 籾数が増加します。このため、夏期に地力窒素が多く発生する地力の高い圃場では倒伏の危険が あるので、中干しを十分に行う必要があります。
図 1 10a当たり収量および品質
注) 1 浅水は水深1〜3cm、深水は5〜7cm(日減水深2〜3cm)。期間は移植後から
中干しまで。菜種油粕は移植7日前に施用し、代かき(移植前日)まで畑状態で管理。
2 粒状菜種油粕(径3mm・長さ5〜10mm、N5%、P2O52%、K2O1%)の基肥施用
量は化学肥料における窒素施用量(N−6kg/10a)の1.4倍(N−8.4kg/10a)、
追肥は同量(N−3.5kg/10a)を施用する。
3 品種:ヒノヒカリ、移植日 6月23日。
図 2 土壌の酸化還元電位
図 3 葉色(SPAD値)の推移