捕食性天敵を活用した環境にやさしい露地ナスの害虫防除法
生産環境研究所
1 背景、目的
ナスを加害するミナミキイロアザミウマは殺虫剤に強く、難防除害虫として問題になっています。しかし、殺虫剤に替わる効果的な防除手段が無いため、殺虫剤を頻繁に散布することでなんとか防除しています。そのため、ミナミキイロアザミウマに対する防除は生産者にとって経済的にも労力的にも大きな負担となっています。
ところが、露地ナスではミナミキイロアザミウマに対して土着の捕食性天敵のヒメハナカメムシ類が発生することが明らかにされてきました。そこで、ヒメハナカメムシ類に影響の少ない選択的農薬だけを用いることによって天敵類の働きを促進し、農薬使用回数を大幅に軽減できる環境保全型の害虫管理技術を確立しました。
2 成果の概要、特徴
1)従来の慣行防除では、土着天敵のヒメハナカメムシ類はほとんど発生しませんが、ミナミキイロアザミウマやその他の病害虫類に対して選択的農薬を使用した総合防除では、6月中下旬からヒメハナカメムシ類の発生が認められます。
2)慣行防除では頻繁に殺虫剤を散布してもミナミキイロアザミウマの密度を十分に抑えることは困難ですが、総合防除ではヒメハナカメムシ類によってミナミキイロアザミウマの密度は著しく抑えられます。
3)総合防除では慣行防除より大幅に少ない防除回数で、被害果の発生を少なくすることができます。ただし、露地ナスと施設ナスが混作される地域(例えば、A地、B地およびF地)では、ミナミキイロアザミウマが露地ナスと施設ナスとの間を移動しながら周年的に発生するため、露地ナスでの発生量が多くなり、被害抑制効果がやや劣ります。
3 主要なデータなど
表1 露地ナスでの慣行防除との比較による総合防除の効果
写真1 ミナミキイロアザミウマを攻撃している天敵ヒメハナカメムシの成虫