現場で簡単にできる「とよのか」圃場の土壌溶液診断法
生産環境研究所
1 背景、目的
イチゴ「とよのか」の高品質安定生産を行うためには、土壌中の窒素成分の動態をリアルタイムに把握し、そのつど適正な施肥管理を行なうことが重要です。従来の土壌診断法は、分析結果を得るまでに長時間を要していましたが、土壌溶液診断法では継続的、非破壊的に迅速な診断を行うことが可能です。また、最近は簡易な土壌溶液採取装置ならびに診断機器が開発されています。
そこで、これらを有効に活用して、農家自らが現場で簡易・迅速に行なえる土壌溶液診断法を確立しました。
2 成果の概要、特徴
1)土壌中の硝酸態窒素は、ほぼ完全に土壌溶液中に溶出するので、土壌溶液中の硝酸態窒素濃度と土壌含水比(水分含量)は反比例の関係にあります。
2)土壌含水比(x%)と土壌溶液中硝酸態窒素濃度(y ppm)を測定することにより、土壌中の硝酸態窒素含量(a mg/100g)を簡易に推定することができます。これらの関係は、a=xy/1,000で表されます。このaの値と土壌中硝酸態窒素含量の指標値Amg/100g(この値は9月中句から1月まで2〜6mg/100g、2月以降2〜10mg/100g、平成5年度成果)の差を追肥窒素施用量の目安とします。また、この指標値から換算すると、壌質土壌(圃場容水量;含水比30〜35%の場合)における土壌溶液中の適正な硝酸態窒素濃度は9月中句から1月まで60〜200ppm、2月以降60〜330ppmとなります。
3)土壌溶液は、かん水24時間後に土壌溶液採取器(DlK‐8390)で採取し、溶液中の硝酸態窒素濃度は硝酸試験紙(Merck社RQflex)により、また、土壌含水比はグリセロールー屈折計法で簡易に測定できますので、土壌分析を必要とせず、農家が現場で追肥の必要量を迅速に判断することができます。
3.主要なデータなど
図1 含水比と土壌溶液中の硝酸態
窒素濃度
図2 簡易土壌溶液診断のフロー
写真1 現場での土壌溶液診断