地域条件に応じた稲作の担い手の展開方向


[要約]
 稲作の担い手類型で基幹的担い手のいない市町村に区分された地域の、目標とする稲作の担い手形態と担い手育成のための外部環境条件を明らかにした。        
企画経営部・経営情報課
[ 連絡先]  092-924-2936
[部会名]  生産環境
[専門]    経営
[対象]    経営・経済
[分類]    行政


[背景・ねらい]
  稲作の担い手の類型( 7類型)による地域区分では、小規模自己完結地域や零細規模自己完結地域等、基幹的担い手のいない市町村の割合が約6割( 56市町村)を占める。そこで、稲作の基幹的担い手がいない市町村で担い手を育成する場合の、目標とする担い手形態とその方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@農業地域類型と稲作の担い手類型の関係 農業地域類型と稲作の担い手類型をクロス分析すると、以下のとおりであった。 山間地地域は全て零細規模自己完結地域である。平地農村地域では、農家集団担い手地域及び個別大規模・個別中規模と農家集団の併存地域等、農家集団の比重の高い地域が多い。都市的地域、中間農業地域では、担い手類型との一定の傾向はみられない(表1)。

A稲作の担い手育成の手段 稲作担い手類型に使用した7指標に、外部環境条件を中心とした8指標(主業農家率、複合経営農家率、 20a以上の整備水田率、育苗施設の苗供給率、共同乾燥施設の処理可能面積率、標準小作料、二毛作率、水田借地率)を加え、97市町村全体の指標間の相関関係を分析すると、以下のとおりであった。 個別大規模農家比率及び農家の組織化率は、土地利用の組織化率との相関がみられた(大規模農家比率との相関係数:0.41、農家の組織化率との相関係数:0.49)。その他の指標間には、相関が見られなかった。したがって、稲作の基幹的担い手の育成のためには、個別農家育成、農家集団育成を問わず土地利用調整が起点となる。

B農業地域類型単位の分析 目標とする稲作の担い手形態と担い手育成の手段を具体的にするため、農業地域類型ごとに前記 8指標を利用して主成分分析、クラスター分析を行った。ここでは中間農業地域の分析結果を示すと、以下のとおりであった。 
          ア)主成分分析の結果は、第3主成分までで累積寄与率 0.85以上(分析結果:0.70)を得ることが出来なかった。ただし、第1主成分(寄与率:0.36)が集約度を、第2主成分(同:0.20)が生産基盤を示すことが予測できた。
          イ)クラスター分析の結果、 3類型に区分できた。A類型は、集約度が低く生産基盤  整備が遅れている地域。B類型は、集約度が低く生産基盤整備が進んでいる地域。  C類型は、集約度が高く生産基盤整備が遅れている地域である。
          ウ)小規模自己完結地域 4町(勝山、若宮、築城、庄内町)は、個別担い手地域へと  展開する可能性があり、展開条件として土地利用調整、基盤整備が重要である。
          エ)同様に、零細規模自己完結地域11市町村も目標とする担い手形態と、その手段が  明らかになった。

[成果の活用面・留意点]
@ 行政・普及機関において、地域農業計画や担い手育成等の振興計画を作成する場合の基礎資料となる。

A都市的地域、平地農村地域でも同様に稲作の担い手の展開方向とその方法を示すことができる。

B山間農業地域は、稲作の担い手類型が零細地域 1類型だけであるため、ここで利用した分析方法では展開方向を示すことが出来ない。


[具体的データ] 









 


[その他]
研究課題名:地域条件に応じた担い手の類型化と展開方向
予算 区分:経常
研究 期間:平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者:中原秀人、今林惣一郎、大森 薫
発表論文等:平成5〜7年 九州地域試験研究成績・計画概要集−農業経営−