重鉱害復旧田に客入されたせき薄な作土への有機物資材の施用効果
 
[要約]
 せき薄な土壌を作土として客入した重鉱害復旧田において、稲わらと麦わらを全量還
元し、牛ふん堆肥を10a当たり毎年4t施用すると、水田下層土や河川敷土では5年
で可給態窒素と全炭素含量が改善目標値(8r/100g,1.74%)を越えるが、
花崗岩風化未耕土では目標値に達しない。
 
鉱害試験地 連絡先:09494−2−0245
 
[背景・ねらい]
 重鉱害田の復旧工事では、表土扱いが困難なため肥沃度の低い水田下層土や花開岩由
来の未耕土を作土として客入することが多い、しかし、これらの土壌は窒素供給量が少
ないため、作物の生育や収量は著しく低下する、そこで、重鉱害復旧田において肥沃度
の低い客入作土の理化学性を向上させるため、有機物資材を施用し、水稲及び小麦の生
育・収量に及ぼす効果を明らかにする。
 
[成果の内容・特徴]
 1 小麦+水稲の作付体系で、稲わらを全量還元し、牛ふん堆肥を毎年4t/10a
連用すると、4年間で可給態窒素含量は5〜7r/100g増加する。麦わらを全量還
元すると4年間でさらに0.4〜0.9mg/100g程度増加する、この結果、粘質
な水田下層土や河川敷土では4年後には、土壌改善目標値8r/100g以上となる。
可給態窒素含量の少ない花崗岩風化未耕土では改善目標値に達しないものの、5r/1
00g程度に増加する(表1)。
 2 稲わらを全量還元し、牛ふん堆肥を毎年4t/10a連用すると、5年間で全炭
素含量は1.3〜1.6%程度増加する。このため、水田下層土や河川敷土のように全
炭素含量を0.5〜0.6%含む土壌では、5年間で水田の土壌改善目標値(全炭素含
量  1.74%)を越える。花崗岩風化未耕土では、土壌改善目標値に達しないもの
の、  1.4%程度まで増加する(表1)、
 3 水稲の収量は水田下層土と河川敷土に比べて、土壌の可給態窒素含量の少ない花
崗岩風化未耕土で劣る。牛ふん堆肥を毎年4t/10a施用すると、無施用に比べて4
年目には10〜26%の増収となり、特に花崗岩風化未耕土では効果が高い(表2)。
 4 小麦の収量は長雨や日照等、気象の影響を受け易いため年次間差が大きく、牛ふ
ん堆肥施用や麦わら還元の効果にはばらつきがある(表2)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 重鉱害復旧田の土壌改良対策の参考資料として活用する。
 2 麦わらを還元する場合、水稲の初期生育が不安定になる場合があるので水管理を
適切に行う。麦わらの還元量が多い時には、特に注意が必要である。
 3 水田下層土や河川敷土の客入にあたっては、あらかじめ理化学性を診断しておく
 4 花崗岩風化未耕土では土壌改善目標値に達するまで、さらに堆肥の連用による土
づくりを行う。
 
[具体的データ]
 
[その他]
 研究課題名:鉱害復旧田の地力増強と熟固化
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成5〜9年)
研究担当者:渡邊敏朗、庄篭徹也、豊田正文、三井寿一、小田原孝治
発表論文等:平成5〜9年度鉱害試験地試験成績概要書