長期貯蔵かき「富有」の氷温貯蔵による果皮黒斑の発生抑制

[要約]「富有」の長期貯蔵時に発生する果皮黒斑は、厚さ0.06mmのポリエチレンフィルム袋で密封包装し−2℃で氷温貯蔵すると抑制できる。また、氷温貯蔵により呼吸速度を抑制し、全糖含量や果実硬度も翌年の4月まで収穫時の状態に保つことができる。

生産環境研究所・流通加工部・流通利用研究室 [連 絡 先] 092-924-2930

[部会名]生産環境 [専門]加工利用 [対象]果 樹 類 [分 類]普 及

[背景・ねらい]

「富有」はポリエチレンフィルムで密封包装後、0℃の低温庫に貯蔵されているが、果皮黒斑の発生等により商品性を保持できる限界は翌年の2〜3月までである。しかし、3月以降も需要が見込まれることから、果皮黒斑の発生を抑制し、品質保持ができるような「富有」の長期貯蔵技術を確立する。

[成果の内容・特徴]

@「富有」の氷結点は-2.5〜-5.0℃(平均-3.4℃、標準偏差0.6℃)である。
A「富有」の呼吸速度は、貯蔵期間が長くなると−2℃で貯蔵したものほど抑制できる(図1)。
B「富有」の商品性に大きく影響を及ぼす果皮黒斑は、−2℃で氷温貯蔵すると発生を抑制できる(図2)。
C11月下旬に収穫した「富有」を0℃あるいは−2℃で4月まで貯蔵しても、全糖含量や果実硬度は収穫時の状態を保つことができる(図3,4)。
D4月まで貯蔵した「富有」を、販売時の低温ショーケース内温度を想定した15℃に置いても、その後4日間は全糖含量や果実硬度の変化は認められない(データ略)。

[成果の活用面・留意点]

@氷温を利用した「富有」の長期貯蔵技術として活用する。
A収穫が遅くなると黒斑が発生しやすくなるため適期収穫に努める。
B低温庫の冷気吹き出し口付近の温度は、設定温度よりかなり低いので果実に冷気が直接当たらないようにする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:低温利用による果実類の長期貯蔵技術の開発
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成5〜8年)
研究担当者:茨木俊行、池田浩暢
発表論文等:平成5〜8年度生産環境研究所流通加工部試験成績書