アゾ−ラを利用した水稲の雑草抑制効果

[要約]普通期水稲の移植直後にアゾ−ラを20〜40g/u投入すると、投入量が多いほど田面被覆程度は早く、それに伴い雑草を抑制する。雑草抑制効果は、カヤツリグサや一年生広葉雑草に対して高い。

生産環境研究所・生物資源部・微生物利用研究室 [連絡先] 092-924-2970
[部会名]生産環境 [専門]雑草防除 [対象]稲類 [分類]指導

[背景・ねらい]

水生のシダ植物であるアゾーラは、大きな増殖力とシアノバクテリアとの共生による空中窒素固定能力を持つことから、東南アジアや中国南部では古くから水田の緑肥として利用されてきた。我が国ではアゾーラの利用に関する研究は極めて少ないが、近年の環境保全型農業の推進に伴い化学肥料や農薬の投入量を少なくしようとする試みの一環として水稲に対する利用が期待される。
このアゾーラについては、普通期水稲の移植期に20〜40g/u接種すると増殖により田面全体を被覆し、中干し期までに2〜5g/uの窒素を固定し、穂肥の1回分が削減できることを明らかにした(平成6・7年度農業関係試験研究の成果)。このほか、その旺盛な増殖力により水面の全面を覆うことから、雑草抑制効果が期待される。そこで、アゾーラの投入量及び草種別の雑草抑制効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
@普通期水稲の移植期に投入したアゾーラは、投入量が多いほど田面の全体を覆うのに要する日数が短く、中干し期までの生育量も多い(表1)。
A雑草抑制効果は、試験年次(気象条件)やアゾーラの投入量及び雑草の草種によって異なるが、移植後20〜30日程度で全面被覆し、アゾ−ラの生育量が中干し期までに2kg/u以上であれば雑草抑制効果がある。また、アゾ−ラの生育量が2kg/u前後であれば、平成5年度のように日射量が少なかった年は雑草抑制効果が高い傾向が見られた(表1、表2)。
B雑草抑制効果は雑草の種類で異なり、カヤツリグサ及び一年生広葉雑草に対する抑制効果は高かった(表2)。
C300u規模(筑後分場圃場)でもアゾ−ラは全面に広がって繁茂し、1uの枠試験と同等の生育量が得られた。しかし、投入量が20g/uでは、部分的に被覆が遅れることがあるので、投入量は40g/u程度が望ましい(デ−タ略)。

[成果の活用面・留意点]
@除草剤を使用しない環境保全型農業における雑草防除法の一手段として参考となる。
Aアゾーラの生育量が不十分で、雑草が多発した場合は、その部分に中・後期の処理が可能なシハロホップブチル・ベンタゾン剤等の除草剤を局所散布し、雑草を抑制する。
B田面の高低差が大きい圃場やノビエ多発田での利用はさける。

[具体的デ−タ]

[その他]

研究課題名:アゾ−ラの利用技術
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成5〜8年)
研究担当者:庄篭徹也、吉岡哲也、大森薫
発表論文等:平成5〜8年度 生産環境研究所生物資源部試験成績概要書