遺伝子の改良によるヤマイモキチナーゼの発現強化

−食用農作物での遺伝子組換え研究は平成13年度をもって終了しました−


[要約]ヤマイモキチナーゼ遺伝子に細胞間隙分泌のためのシグナル配列を付加すると共に、発現量を高めるための高発現プロモーターを連結し、糸状菌病害抵抗性の発現強化が期待できる植物の形質転換用バイナリーベクターを構築した。

生産環境研究所・生物資源部・生物工学研究室 [連絡先]092-924-2970
[部会名]生産環境 [専門]バイテク [対象]野菜花き [分類]研究

[背景・ねらい]

植物のキチナーゼは、傷害や病原菌の感染によって誘導され、糸状菌の胞子発芽や菌糸伸長を阻害することから、遺伝子組換えによりイチゴやキクで発現させることにより、病害抵抗性を付与できると期待されている。また、キチナーゼの発現部位や発現量を調節することにより、抵抗性の増強が期待できる。そこで、ヤマイモキチナーゼを植物の細胞間隙に局在的に発現させ、かつ発現量を高めるための形質転換用バイナリーベクター(遺伝子の運び屋)を構築する。

[成果の内容・特徴]
@ヤマイモキチナーゼ遺伝子に細胞間隙分泌のためのシグナル配列(シュガービートキチナーゼ由来)を付加し、高発現プロモーター(組換え遺伝子の頭の部分)を連結した植物の形質転換用バイナリーベクターを構築した(図1)。

Aヤマイモキチナーゼ遺伝子にシグナル配列を付加することにより、形質転換タバコの細胞間隙にヤマイモキチナーゼを分泌させることができる(表1、図2)。

Bヤマイモキチナーゼは葉や根のいずれでも発現し、プロモーターとしてEL2Ωを用いた場合、CaMV35Sプロモーターに比較してキチナーゼ活性が高くなる(図3)。

[成果の活用面・留意点] @導入遺伝子の発現強化手法として、平成9年度開始特別研究課題「園芸作物の複合病害抵抗性品種の育成」に利活用する。

[その他]

研究課題名:野菜、花きへの病害抵抗性遺伝子導入
予算区分:県特
研究期間:平成 8年度(平成 6〜 8年)
研究担当者:平島敬太、古賀正明、中原隆夫
発表論文等:平成6〜8年度生産環境研究所生物資源部試験成績概要書
第15回 日本植物細胞分子生物学会