砂質心土の鉱害復旧田における穿孔引込み暗きょの効果


[要約]
砂質心土の鉱害復旧田において穿孔引込み暗きょに弾丸暗きょと混層耕を組み合わせると、降雨後作土と心土の層界で滞水することなく排水され、麦の生育や収量は本暗きょ施工の場合と同等になる。

鉱害試験地
[ 連絡先]  09494-2-0245
[部会名]  生産環境
[専門]    土壌
[対象]    麦類
[分類]    指導


[背景・ねらい]
  鉱害復旧田では、重機械の転圧により心土にち密な層が形成され、透水不良になった水田が多く、暗きょの施工が必要である。鉱害復旧田の暗きょ排水工事は工期が長く多額な費用を要するため、簡易で安価な施工法が望まれている。穿孔引込み暗きょは施工時に巻きシートをパイプとして引き込む工法で、掘削不要で工期が短く安価なため、復旧田での利用が期待される。しかし、穿孔引込み暗きょについて、重粘質土壌における排水効果はすでに認められているが、復旧田の多くは砂質心土であり、砂質土壌での検討はない。そこで、砂質心土の復旧田において穿孔引込み暗きょによる排水効果及び麦に対する生育や収量への影響を明らかにし、鉱害復旧田における水田の汎用化を図る。

[成果の内容・特徴]
@穿孔引込み暗きょに弾丸暗きょと混層耕を組み合わせると、作土と心土の層界がかく乱されて水みちが形成されるため降雨後滞水することなく排水され、麦の生育や収量は本暗きょ施工の場合と同程度になる(表1、2)。

A穿孔引込み暗きょは土層を乱さずに施工できるが、穿孔引込み暗きょだけでは作土と心土の層界で滞水し、排水効果は期待できない(表2)。また、麦の生育や収量も本暗きょ施工の場合と比べて劣る(表1)。

[成果の活用面・留意点]
@穿孔引込み暗きょの施工初年度に混層耕処理を行い、弾丸暗きょを毎年施工する。

A弾丸暗きょはパイプ管に対して直角に施工する。

B混層耕については「農業関係試験研究の成果(平成6年2月 福岡県農政部)」を参照。


[具体的データ]


  注)@試験場所は嘉穂郡稲築町大字平。
    A土壌条件は鉱害復旧田で従来作土(CL)/砂質心土(SL)。
    B麦の品種は平成4年、6年ともにニシノチカラ。
    C平成5年は耕起後の降雨により、穿孔引込み+弾丸区と穿孔引込みのみ区ては
      麦の播種ができなかった。
    D平成6年に穿孔引込み+弾丸区と穿孔引込みのみ区は混層耕処理を行った。
    E本暗きょ+弾丸区は穿孔引込み暗きょを施工した圃場に隣接し、本暗きょは平
      成3年に施工、弾丸暗きょ(間隔4m,深さ20cm)は毎年施工。
    F穿孔引込み暗きょは平成4年に間隔4m、深さ30cmで施工。
    G穿孔引込み+弾丸区はパイプ管に対して直角に弾丸暗きよ(間隔4m,深さ20
      cm)を毎年施工。
    H平成4年は平成5年5月20日、平成6年は平成7年5月26日に調査。
    I登熟期間中(5月中下旬)の降雨量は、平成4年37mm、平成6年106mm。





  注)@混層耕処理は平成6年のみで、牛ふん堆肥施用(3t/10a)後、パイプ管の真上
    を間隔1.5m、深さ25cmで行った。
    A4年度は平成5年2月21日に22mm、5年度は平成6年1月13〜18日にかけて56
     mm、6年度は平成7年3月30日に34mm降雨。
    B採土の部位は条間、深さは5〜15cm。穿孔引込み+弾丸(+混層耕)区と穿孔引
     込み(+混層耕)区はパイプ管とパイプ管の中間を採土。


[その他] 
研究課題名:鉱害復旧田における簡易暗きょの排水効果 
予算 区分:経常 
研究 期間:平成7年度(平成4〜6年) 
研究担当者:渡邉敏朗、豊田正友、三井寿一 
発表論文等:平成3〜6年度鉱害試験地試験成績概要書