施設土壌における塩基の存在形態と合理的な診断法


[要約]
施設土壌では、交換性塩基のほかにそれに匹敵あるいは上回る量の水溶性塩基および炭酸塩が含まれる場合がある。このため、酢酸アンモニウム抽出塩基から水溶性塩基および炭酸塩を差し引いたものを正味の交換性塩基量とし、この値の有効陽イオン交換容量に対する百分率を塩基飽和度とする。  

生産環境研究所・化学部・土壌管理研究室
[連絡先 ]  092-924-2939
[部会名]  生産環境
[専門]    土壌
[分類]    指導


[背景・ねらい]
 従来、農耕地土壌の塩基状態は主として交換性塩基の分析を通じて診断されてきた。この交換性塩基には、土壌のイオン交換体に吸着されている塩基のみでなく、土壌溶液中に溶存しているものも含まれている。水田及び露地畑土壌では、土壌溶液中のイオン量が少ないことからこの部分は通常無視されてきた。しかし、施設土壌では、塩基飽和度が100%を超える場合が多く、慣行法による交換性塩基の測定だけでは塩基状態を的確に診断することが困難となっている。このため、同じ土壌型の水田土壌と施設土壌を比較検討することにより、塩基の存在形態の違いを明らかにするとともに慣行の交換性塩基分析法の問題点と対策について検討する。

[成果の内容・特徴]
 施設土壌と水田土壌とは次の点で異なることを明らかにし、施設土壌に対する合理的な診断法を確立した。

@施設土壌では、交換性塩基のほかに、それに匹敵あるいは上回る量の水溶性塩基および炭酸塩が含まれる場合があるため、酢酸アンモニウム抽出塩基量から水溶性塩基および炭酸塩の量を差し引いたものを正味の交換性塩基量とする。(表1・図省略)

A施設土壌では、正味の交換性塩基量の有効陽イオン交換容量に対する百分率を塩基飽和度とする。有効陽イオン交換容量は正味の交換性塩基量と交換酸度を合計することにより求められる。

B同じ土壌型でも、施設土壌は水田土壌に比べて有機物含量、陽イオン交換容量が高い傾向がある。(表2)

[成果の活用面・留意点]
@地力保全測定診断の手引きに掲載し活用する。

A炭酸塩は、微量拡散分析法(コンウェイ法)で二酸化炭素を定量することによって測定できる。

B水田及び露地畑土壌は慣行法で対応できる。


[具体的データ]






[その他]
研究課題名:簡易土壌分析法の開発
予算 区分:経常
研究 期間:平成7年度(平成5〜7年)
研究担当者:兼子明、藤田彰、小田原孝治、黒柳直彦
発表論文等:平成5〜7年度 生産環境研究所化学部秋冬作試験成績書