モノクローナル抗体利用による温州萎縮ウイルス検出の実用化


[要約]
 温州萎縮ウイルス検出のためには、ダブル・サンドウチ・エライザ法において、コーテング抗体用としてポリクローナル抗体を使用し、酵素標識抗体用には作出した3種類のモノクローナル抗体をカクテル化して利用することで、実用化できる。
果樹苗木分場・無毒化研究室
[連絡先] 09437-2-2243
[部会名]  生産環境
[専門]    病害虫
[対象]   果樹類
[分類]    指導


[背景・ねらい]
 ポリクローナル抗体でのウイルス診断では近縁ウイルスの判別ができないこと、及び抗体の生成量に永続性がない等の欠点が多い。そこで、温州萎縮ウイルスのモノクローナル抗体を作出し(平成3年度 試験研究の成果)、良好な感度を得た。今回、ウイルスの各系統に対する反梵等を明らかにし、その実用化を図る。

[成果の内容・特徴]
@ダブル・サンドウチ・エライザ法において、ポリクローナル抗体をマイクロプレートにコーテングしてウイルスをトラップし、3種類のモノクローナル抗体をカクテル化した後、酵素標識抗体として利用することで、温州萎縮ウイルスを安定的に検出できる(表1)。

Aコーテング用抗体としてモノクローナル抗体を使用すると、ウイルスのトラップ程度が低下するのでポリクローナル抗体を使用する(表2)。
     注)ポリクローナル抗体(Pab):該当ウイルスを、マウスに免疫することにより得られる抗血清であり、抗体の生成量も採取する血液量に限られる。
             
       モノクローナル抗体(Mab):ウイルス等の抗原物質の細かな識別が可能で、得られた抗体は 長期保存、増殖も無限にできる。
          
[成果の活用面・留意点]
@ポロクローナル抗体は、現在、日本植物防疫協会から販売されており購入が可能である。

Aポリクローナル抗体を利用する際の吸収操作(ウイルスフリー粗汁液を添加して行う)は不要である。


[具体的データ]  

  表1 ウイルス検出のためのMab及びPabの組み合わせと陽性数(平成6年)

  注)@分場Pab:温州萎縮ウイルス及びカンキツモザイクウイルスに反応
    A+++:強陽性、++:中陽性、+:弱陽性(擬陽性の内)


  表2 ウイルス検出のためのMabの組み合わせと陽性数(平成5年)

  注)@カクテルMab:2G2、4A5、4E6の各Mabを等量混合し使用


[その他] 
研究課題名:果樹病原菌に対する抗体の作出と適応性の検討 
予算区分 :経常 
研究期間 :平成6年度(平成2〜6年) 
研究担当者:草野成夫、下村克己 
発表論文等:平成5〜6年度果樹苗木分場成績書