樹園地における有機質肥料の分解特性


[要約]
 夏期の菜種油粕、魚粕の窒素の分解は施用直後から急速に進行し、埋設14日後でともに70%、2カ月後で78〜85%である。冬期の分解は緩やかで埋設20日で30〜50%、3カ月後で50〜70%である。また、表面施用は土中埋設に比べ窒素の分解が遅くなる。

生産環境研究所・化学部・作物栄養研室
[連絡先] 092−924−2939
[部会名] 生産環境
[専門]   肥料
[対象]  果樹類
[分類]   指導


[背景・ねらい]
 果樹栽培においては有機質の肥料が広く用いられているが、その実際の肥効は明らかにされていない。そこで、各有機質肥料の果樹園土壌中における窒素の分解特性について検討し、有機質肥料の施用法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
@夏期における有機質肥料の分解は施用直後から急速に進行し、菜種油粕、魚粕の窒素分解率は埋設後14日で共に70%に達する。その後の分解は緩やかとなり、9月上旬には、菜種油粕で85%の窒素が、魚粕で78%の窒素が分解する。(図1)

A冬期における分解は夏期より緩やかで埋設20日後で肉粕が50%、菜種油粕が43%、魚粕が31%の窒素が分解する。その後、地温が低下してくる12月から2月は、窒素の分解速度がさらに低下し、埋設90日後でも肉粕で70%、菜種油粕で65%、魚粕で58%の分解にとどまる。(図2)

B有機質肥料を土壌表面に施用した場合、土壌中に混合した場合より初期の分解率は低いが、徐々に差は縮まり、夏期の場合2カ月程度で変わらなくなる。(図1)

[成果の活用面・留意点] 
果樹施肥基準に登載し、普及指導上の参考とする。


[具体的データ]
 

        表1 供試有機物


 

  図1 夏期における有機質肥料の窒素分解(平成3年)



  図2 冬期における有機質肥料の窒素分解(平成6年)
    注)すべて土中埋設法


[その他] 
研究課題名:樹園地土壌における有機質肥料・資材の分解特性の解明 
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成2〜6年)  
研究担当者:末信真二、角重和浩、山本富三、井上恵子、兼子明
発表論文等:平成2年〜6年度化学部試験成績概要書