緩効性肥料を用いた飼料作物の1回全量施肥栽培と窒素の溶脱


[要約]
 緩効性肥料を用いて1回全量施肥栽培をする場合の収量は、飼料用トウモロコシでは慣行の普通化成分施と同等であり、イタリアンライグラスでは慣行の8割から9割である。緩効性肥料を用いた場合、慣行よりも下層への窒素溶脱量がやや少なくなる。

生産環境研究所・化学部・作物栄養研究室
[連絡先] 092−924−2939
[部会名] 生産環境
[専門]   肥料
[対象]  飼料作物
[分類]   指導


[背景・ねらい]
 緩効性肥料の利用は施肥の省力化になるとともに、肥料成分の利用率の向上による窒素溶脱の軽減になることが期待される。緩効性肥料の飼料作物に対する肥効については、6月播種トウモロコシにおける施用効果を明らかにした(平成2年度農業関係試験研究の成果)。今回は、緩効性肥料の夏作と冬作における肥効ならびに畑地土壌からの窒素の溶脱量を明らかにし、緩効性肥料の環境保全的効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
@夏作の飼料用トウモロコシにおいては、 100日タイプの被覆尿素を基肥で1回全量施用することにより、同量の窒素を普通化成で2回に分施する場合と同等の収量が得られる。(表1)

A冬作のイタリアンライグラスでは、 100日タイプの被覆尿素を基肥で1回全量施用することにより、普通化成で3回に分けて施用する場合の8〜9割の収量となる。(表1)

B緩効性肥料からの窒素吸収量は普通化成分施と同等であり、施肥窒素利用率は約55%である。(表2)

C下層への窒素溶脱量は、普通化成分施では投入窒素量の約30%で、緩効性肥料を用いた場合には普通化成分施よりやや少なくなる。(図1)

[成果の活用面・留意点]
@冬作では、緩効性肥料の肥効が劣り、収量が低くなるため、イタリアンライグラスで緩効性肥料を使用する利点は少ない。

A下層への窒素溶脱量は時間当りの降水量に大きく影響を受ける。


[具体的データ]

          表1 乾物重の経年変化(kg/10a)

 注)@綬効性Aは加水分解性の窒素肥料であるスーパーIB、綬効性Bは被覆尿素肥料である
    LP100。
   Aトウモロコシの窒素施用量は10a当り17kg、イタリアンライグラスでは24s。
   B普通化成区はトウモロコシでは2回に分けて施用、イタリアンライグラスは3回に分け
    て施用。
   C()内は普通化成に対する指数 
 


          表2 窒素吸収量の経年変化(kg/10a)
 



  図1 ライシメータから流出した窒素量(平成4年〜5年度) 
   注)長い矢印は各区の基肥時期、短い矢印は普通化成区の追肥時期。


[その他] 
研究課題名:緩効性肥料からの窒素溶脱量 
予算 区分:経常
研究 期間:平成6年度(平成3〜6年) 
研究担当者:末信真二、山本富三、井上恵子、兼子明、角重和浩、大石登志雄
発表論文等:平成3〜6年度春夏作及び秋冬作化学部試験成績概要書