福岡県の樹園地土壌における理化学性の経年変化

 [要約]
 果樹園
茶園ともに第1層の浅層化と可給態リン酸含量の増加が著しい。特に、ブドウ園や茶園では可給態リン酸含量が全調査ほ場で改善目標値の上限を越えている。一方、茶園ではpHが改善目標値未満のほ場が半数以上である。

生産環境研究所・化学部・土壌管理研究室  [連絡先]092-924-2939
[部会名]生産環境  [専門]土壌  [対象]果樹類、工芸作物類 [分類]指導

[背景・ねらい] 
 福岡県の樹園地では、ナシ、カンキツ、ブドウ、茶など多様な品目が栽培され、特にブドウや茶は全国でも有数の産地となっている。このような作物において、環境保全に留意しながら土壌の生産力を維持し、高品質な農産物の安定生産を図るには、生産力の指標となる土壌養分の実態を把握することが重要である。そこで、樹園地土壌における理化学性の実態とその経年変化を明らかにし、適切な土壌管理対策の基礎資料とする。
 
[成果の内容・特徴]
 1 果樹園(ナシ、カンキツ、ブドウ)では、堆厩肥の施用農家割合が増加している。また、石灰質資材の施用農家割合はほぼ変わらないものの平均施用量が減少している(表1)。
 
 2 茶園では、堆厩肥の施用農家割合が増加しているものの平均施用量は減少している(表1)。 
 
 3 ナシ園では、第1層の浅層化がみられる。pHや腐植含量の平均値は改善目標値以内にあり、改善目標値未満のほ場割合は大きく減少し改善が進んでいる。一方、可給態リン酸含量は改善目標値の上限を越えるほ場割合が増加しており、平均値は調査開始時の2倍以上になっている(表2、3)。
 
 4 カンキツ園では、第1層の深さは平均10.3pで樹園地の中で最も浅層化している。pHが改善目標値未満のほ場割合は増加し全体の56%を占めている。腐植含量が改善目標値未満のほ場割合が大幅に減少しているが、可給態リン酸含量は上限値を越えるほ場割合が増加しており、平均値はいずれも高くなっている(表2、3)。
 
 5 ブドウ園では、pHが改善目標値を越えるほ場割合が増加し全体の57%を占めている。腐植含量は、依然として全体の64%のほ場が改善目標値を下回っている。また、可給態リン酸含量は全調査ほ場で改善目標値の上限を越えており、調査開始時の2倍程度になっている(表2、3)。
 
 6 茶園では、pHは全体の69%のほ場が改善目標値未満であり、平均値3.7と低下傾向にある。腐植含量は全調査ほ場で改善目標値を満たしており、平均値は果樹園に比べて極めて高くなっている。可給態リン酸含量は全調査ほ場で改善目標値の上限を越えており著しく増加している(表2、3)。
 
 
[成果の活用面・留意点]
 1 土づくり対策に関する普及指導上の基礎資料として活用する。
 2 土壌診断に基づき有機物や土づくり資材を適正に施用する。
 3 可給態リン酸含量が蓄積傾向にあるので、土壌診断に基づき減肥に努める。
 
[具体的データ]
 
 
[その他]
 研究課題名:土壌環境基礎調査 定点調査
 予算区分:国庫
 研究期間:平成10年度(昭和54年〜平成9年)
 研究担当者:渡邉敏朗、小田原孝治、藤田 彰、酒井憲一、黒柳直彦
 発表論文等:平成6〜9年度 土壌環境対策事業成績書