キク「秀芳の力」のプロトプラストからの植物体の効率的な再分化法 

 [要約]キク「秀芳の力」のプロトプラストは、NN67培地を用いて7日毎にショ糖濃度を低下させた培地を追加すると分裂が促進される。分裂増殖した細胞塊をMS培地に置床してカルスを形成し、その後BA2mg/lとGA0.2mg/lを添加したMS培地に移植すると植物体ができる。

 生産環境研究所・生物資源部・生物工学研究室 [連絡先] 092-924-2970
 
[部会名]生産環境  [専門]バイテク [対象]花き類  [分類]研究
 
[背景・ねらい]
 園芸作物の育種は、従来の交雑法では目的とする形質のみの導入が困難であり、また、新品種の育成に長い年月を要することから、効率的に形質の導入や変異の作出ができるプロトプラストを利用した遺伝子組換えやイオンビーム照射等の新技術の活用が求められている。これらの新技術を用いた育種では、プロトプラストからの植物体の再分化が重要な課題であり、この方法を確立する。
 
[成果の内容・特徴]
 1 キク「秀芳の力」のプロトプラストの分裂は、NN67培地を用い、ショ糖濃度を0.4Mとして、その後7日毎に0.1Mずつ低下させた培地を追加することにより促進される   (写真1、図1)。
 2 プロトプラストからのカルスの形成は、64細胞以上に分裂した細胞塊を、BA 2mg/lとNAA 0.5mg/lを添加したMS寒天培地に置床すると、約30日でプロトプラストの約53%がカルスを形成する(写真2、図1)。
 3 カルスからの植物体の再分化は、プロトプラスト由来カルスを、BA 2mg/lとGA0.2mg/lを添加したMS寒天培地に移植すると、約4カ月後にカルスの約27%が植物体に再分化し、再分化率は従来の2倍以上に向上する(写真3、図1)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 プロトプラストを用いた変異個体の作出技術として活用できる。
 
[具体的データ]
 
 
[その他]
 研究課題名:イオンビーム照射によるキクの培養変異の誘発
 予算区分:経常              
 研究期間:平成10年度(平成8〜10年)
 研究担当者:中原隆夫、平島敬太、古賀正明
 発表論文等:平成8〜10年度生物資源部試験成績概要書