早期水稲後地における飼料作物の栽培


[要約]
 早期水稲後地を活用した飼料作物の栽培では、イタリアンライグラスと青刈麦類の混播栽培が多収であり、1.2〜1.3t/10aの乾物収量が得られ、早期水稲後地を自給粗飼料増産の場として有効利用することができる。

畜産研究所・飼料部・飼料作物研究室
[連絡先 ] 092-925-5231
[部会名]  畜産
[専門]    栽培
[対象 ]  牧草類
[分類]   普及


[背景・ねらい]
 早期水稲の作付けが定着してきているが、その後地は 8月下旬から翌年 4月上旬までしか作付け利用ができないため、従来の主要作物である麦の作付けができず、利用されていない場合が多い。一方、飼料作物は栽培期間が短く、早期水稲の裏作期間でも栽培が可能である。 そこで、早期水稲の後作に適した飼料作物の草種、品種、栽培法及び早期水稲への前作の影響を明らかにし、早期水稲後地における飼料作物の栽培法を確立する。

[成果の内容・特徴]
@早期水稲後地の飼料作物としては、イタリアンライグラスと青刈麦類の混播栽培が適している。 9月上旬に播種し、12月中旬〜下旬と 4月上旬の 2回刈で1.2〜1.3t/10aの乾物収量が得られる(図1 、表1 )。

A混播する両草種の品種はイタリアンライグラス品種(極早生、早生種)と青刈大麦品種(早生種)・青刈えん麦(早生種)のどの組み合わせでも高い乾物収量が得られる(表1 )。

[成果の活用面・留意点]
@この成果は早期水稲後地を利用して飼料作物の作付け拡大を図る際に活用できる。

A飼料作物を 1番草のみ利用する場合、収穫後は早期に耕耘して残根残株の分解を促す。

B冬期に収穫した飼料作物の1番草はサイレージに調製して、気温が上昇する4月頃までの短期利用とし、開封後は早期に利用する。

C飼料作物後の早期コシヒカリ栽培では、前作飼料作物の残根残株の影響で初期生育が劣るので、基肥や水管理に留意するとともに穂肥は生育診断を参考にして施用する(表2 )。


[具体的データ]


       図1 早期水稲後地における飼料作物の栽培    


 表1 早期水稲後に栽培した飼料作物の乾物収量 (平成3〜4年)(kg/10a)

  注)@栽培法 播種:9月5日、播種量:イタリアンライグラス2s、青刈麦類10s
         収穫:1番草12月20日、2番草4月8日
    A()内は麦類の穂重
    B異符号間に5%水準で有意差有り


  表2 飼料作物栽培後の早期コシヒカリの生育及び収量      (平成6年)

 注)@*:基肥一種肥1一種肥2
   A前作イタリアンライグラスにはNを17kg/10a施用。


[その他]  
研究課題名:早期水稲後地の晩夏播き栽培
予算 区分:経常 
研究 期間:平成 6年度(平成 3〜 6年)
研究担当者:太田 剛、馬場武志、大石登志雄、柿原孝彦 
発表論文等:平成 3〜 5年度畜産関係試験成績書