[要約]
イチゴの花粉媒介に適したミツバチを作出するため、各種異系統間について、現地イチゴハウス内での産卵性や特性及び訪花性等を検討した。その結果、畜研系を組み合わせた交配種が冬期〜春期の産卵性に優れ、チョーク病の発生も少ない。
畜産研究所・飼料部・家畜栄養研究室
[連絡先] 092-925-5231
[部会名] 畜産
[専門] 育種
[対象] 家畜類
[分類] 指導
[背景・ねらい]
近年、農作物の花粉媒介へのミツバチ利用が増加している。特に、ハウスイチゴ栽培ではミツバチの導入は必須条件である。しかし、イチゴ栽培期間の拡大でミツバチの利用期間は10月〜
4月と長期化している。ミツバチにとって、冬期の活動とハウス内環境は大きなストレスとなつており、蜂群の衰退と生産物の品質低下を招いている。
そこで、ハウス内環境によく順応して活発に活動する能力を持ったミツバチを作出する。
[成果の内容・特徴]
@ハウス内放飼蜂群は、野外飼育群のに比較して働き蜂の消耗、減少が著しい。また、春先の産卵開始時期も遅い傾向があり産卵育児数も少ない(表2)
Aハウス内放飼蜂群の冬期〜春期の産卵成績では、畜研系を組み合わせた交配種が優れていた。
B交配種の特性について、イタリア系を組み合わせた異系間交配種は性質がやや荒く、ニュージーランド系を用いた交配種では、チョーク病の発生が多い(表3)。
ミツバチによる刺害等について栽培農家からの指摘はなかった。また、畜研系及びイタリア系を雄として組み合わせた異系間交配種は、なくニュージーランド系を雄として組み合わせた異系間交配種は発生が多い
Cハウス内の訪花活動は、各異系間交配種の間に大きな差はなく、いずれの異系間配種もイチゴの授粉に利用することができる(表3)。
[成果の活用面・留意点]
@ハウスイチゴの花粉媒介用ミツバチとして活用する。
Aハウス内放飼蜂群の維持するには、導入時の蜂群の群勢とハウス内の湿潤度管理、農薬使用時のミツバチの取り扱いかたによって影響されるので。養蜂家とイチゴ栽培農家への放飼技術についての指導が必要である。
[具体的データ]
表1 異系統間の組み合わせ交配 (平成4〜6年)
注)NZ系:ニュージーランド系、GI系:ゴールデンイタリアン系
表2 イチゴハウス内放飼期間中の蜂量減少と産卵性 (平成4〜6年)
注)@成績は、調査対象5戸の平均
A終了時蜂量:開始時(11月上旬)蜂量に対する終了時(3月下旬)蜂量の割合
B冬期産卵数:2月上旬の。蜂量1kg当たり産卵数
C終了時産卵数:終了時(3月下旬)の蜂量1s当たり産卵数
D対照:養蜂家保有群
表3 異系間交配種の特性 (平成4〜6年)
注)@性質:穏和−5、やや穏和−4、普通−3、やや荒い−2、荒−1
A疾病(チョーク病):無−5、微−4、中−3、多−2、甚−1
B訪花活動:活発−5、良−4、普通−3、やや悪−2、悪−1
[その他]
研究課題名:種蜂の増殖、選抜
異系交配種の訪花活動
予算区分 :経常
研究期間 :平成6年度(平成2〜6年)
研究担当者:深江義忠
発表論文等:平成4〜6年度畜産関係試験成績書