採卵鶏へのカキ殻給与による破卵率の低減効果

[要約]採卵鶏用飼料のカルシウム供給源を炭酸カルシウム50%,カキ殻50%として給与すると,高破卵系統では鶏卵生産性には影響せず,破卵発生を3/4程度まで抑制する。ただし,低破卵系統では破卵発生の抑制効果は期待できない。

畜産研究所・中小家畜部・家きん研究室 [連絡先]092-922-4100
[部会名]畜 産 [専門]飼育管理 [対象]家 禽 類 [分類]指 導

[背景・ねらい]

採卵鶏農家で生産される鶏卵の 5〜10%は破卵となり,そのまま農家の損失となっている。そのため,破卵を減少させることができれば鶏卵の商品化率,さらには農家の経営効率の向上が期待できる。破卵が生じる要因としては,ケージや集卵ベルトによる物理的な破損,採卵鶏の遺伝的要因,鶏齢の進行による影響等があげられる。
このうち遺伝的要因による破卵は,飼料中のカルシウム供給源の種類,溶解性,物理性によって影響されると考えられている。カルシウム供給源としてのカキ殻は,一般の配合飼料に使用される炭酸カルシウムに比較して,カルシウムの含有量は同等で,溶解性,物理性(粒度,かさ比重等)が異なる特徴がある。
そこで,採卵鶏の低破卵系統と高破卵系統を用いて,給与飼料中のカルシウム供給源に炭酸カルシウム50%,カキ殻50%を配合し,飼料中のカルシウムレベルが一般の配合飼料と同等となるようにした場合の破卵の抑制効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
@低破卵系統と高破卵系統を比較した場合,卵殻卵重比は低破卵系統が有意に高い。卵殻卵重比は破卵率との相関が高く,卵殻質評価の指標となる(表1)。

Aカキ殻を混合して給与すると,21〜68週齢までの破卵率は高破卵系統において有意に低くなり,破卵は3/4程度に抑制される。低破卵系統ではカキ殻給与の効果はない(表2)。

Bカキ殻を混合して給与すると,一般の市販配合飼料と比較して,産卵率,産卵日量,飼料消費量および飼料要求率に差は認められず,鶏卵の生産性に影響を与えない(表3)。

[成果の活用面・留意点]

カキ殻は,特に破卵率の上昇する産卵中期(45週齢)以降に給与し,破卵抑制に活用する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:採卵鶏の鶏卵品質と卵殻強化技術
予算区分:経常
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:上田修二,福原絵里子,村上徹哉,津留崎正信
発表論文等:平成7,8年度畜産関係試験成績書