イノシシの精液性状とイノブタの繁殖性及び飼育管理方法

[要約]
 イノシシの精液採取可能期間は11月〜5月である。精液性状は、平均精液量87m1、生存率は82%、精子活力は十2.9、精子数は6.1億個/mlである。液状精液を用いた場合、イノブタ子畜の生産頭数は豚と同等で、育成率は10%程度高い。出荷体重は飼料要求率が優れる90kg適当である。

畜産研究所・中小家畜部・養豚研究室 [連絡先]092−925−5177
[部会名]畜産 [専門]飼育管理 [対象]家畜類 [分類]指導
 
[背景・ねらい]
 新しい地域特産品としてイノブタの開発に取り組んでいるが、イノブタを安定的に生産するためには雄イノシシから精液を採取し、雌豚に人工授精を行う必要がある。そこで馴致した雄イノシシから精液を採取し、精液性状と人工授精によるイノブタの生産性を明らかにする。また、出荷体重と発育特性の関係等について調査し、適正な出荷体重を明らかにする。(要望機関名:農業技術課(H8))
 
[成果の内容・特徴]
1 イノシシの精液性状は、精液量59〜116m1、生存率は82%、精子活力は+2.9である。精子数には幅があり、3.0〜8.6億、平均で6.1億個/m1である。一般酌な豚の精液量の180ml、精子数2.45億個に比べて、精液量が少なく、精子数が多い。精液採取可能期間は11月〜5月程度で、この期間を過ぎると乗鴛意欲を示さなくなる(表1)。
2 液状精液を利用した人工授精によりイノブタを生産すると、1腹当たりの子畜の生産頭教は9.2頭で、育成率は95、7%である。豚の自然交配と比較すると生産頭数はほぼ同等で、育成率は10%程度高い。凍結精液を利用した場合、生産頭数は4.7頭と低い。またイノブタの在胎日数はブタに比べて2〜3日長い(表2)。
3 イノブタ(大ヨークシャー種×イノシシ)の出荷体重は、90kgが105kgに比べて雌雄平均肥育期間は24日間短く、飼料要求率は0.83低れている。赤肉割合は、90sの50%に比べ105kgは53%でやや多い(表3)。
 
[成果の活用面・留意点]
1 イノシシの精液採取を可能にするためには、幼齢期より1日1回10分程度の接触、ブラッシングを行い、馴致する。
2 イノブタの給与飼料は、一般的な豚用飼料(生体重30kgまでは人工乳、30kg以降は肥育用飼料)とする。飼養管理は肥育豚の管理方法に準じるが、肥育豚房の柵は、豚よりも50p程度高くする必要がある。
3 イノブタ生産の技術資料とする。
 
[具体的データ]
 
[その他]研究課題名:イノブタの生産及び飼養管理技術
予算区分:経常
研究期間:平成10年度(平成8〜10年)
研究担当者:村上徹哉、山本英二、大和碩哉
発表論文等:平成10年度畜産関係試験成績書