牛凍結胚の生存性低下を防止する凍結ストロー移し替え槽の開発

[要約]ストロー内に保存された牛凍結胚は、保存庫移し替え時の室温曝露により融解後の胚の生存性が低下する。室温曝露せず、液体窒素内で移し替えができる発泡スチロール製凍結胚移し替え槽を開発した。この槽を利用すると、胚の生存性が高く維持できる。

畜産研究所・大家畜部・畜産工学研究室 

 連絡先

 092-925-5232

部会名
 

畜  産
 

専門
 

繁 殖
 

対象
 

肉用牛
 

分類
 

普及
 
[背景・ねらい]
 牛胚凍結ストローは、輸送のため生産機関の保存庫から移植機関などの保存庫へ、さらに、移植師の保存庫へ移される。また、凍結ストローのチェックが行われている。このように、凍結ストローの液体窒素からの出入に伴う頻回な室温曝露は、融解後の胚の生存性に悪影響を及ぼすことが懸念される。
 そこで、室温曝露による融解後の胚の生存性に及ぼす影響を明らかにするとともに、室温曝露せず凍結ストローの移し替えができる器具を開発する。
         
[成果の内容・特徴]
1.凍結ストローを保存庫から別の保存庫への移し替えに 2.4秒かかり、室温曝露によりストロー内温度は-176℃まで上昇する(表1)。 
 
2.室温曝露回数の増加に伴い、凍結胚の融解後の生存性は低下する(表2)。
 
3.発泡スチロール製で、底面が30°傾斜し、底面に波状に加工した図1に示すストロー移し替え槽を開発した。この槽を利用すると、キャニスターを傾斜した底面に置き、その上方の液体窒素内で、ストローの番号等を確認しながら、室温曝露せず凍結ストローの移し替えが容易にできる。また、斜面には波状加工が施してあるため、凍結ストローを取りこぼしても回収が容易である(図1)。
 
4.凍結ストロー移し替え槽を用い、液体窒素内でストローを移し替えると、融解後の胚の生存性は維持できる(図1表3)。
 
[成果の活用面・留意点]
1.胚移植関係機関において、凍結ストローの移し替え時の室温暴露による受胎率低下を防止する技術として利用できる。
 
2.凍結ストロー移し替え槽は凍結精液の移し替えにも利用できる。 
 
3.キャニスターの底面は穴があいており厚紙等で封鎖し、液体窒素がキャニスターから出ないようにして利用する。
 
[その他]
 研究課題名:体外受精胚移植における受胎性向上技術の確立
 予算区分:経常
 研究期間:平成11年度(平成11〜12年)
 研究担当者:笠正二郎、森美幸、上田修二
 発表論文等:平成11年度畜産関係試験成績書