交雑種去勢牛における混合飼料中の酸性デタージエント繊維増給による肉質向上
 
[要約]
 交雑種去勢牛において、肥育前・中期に酸性テニタージェント繊維含量の高い混合飼
料を給与すると、脂肪交雑、肉の色沢、肉のきめ及び締まりが改善され、枝肉の上位格
付率は向上する。
 
畜産研究所・大家畜部・肉用牛研究室  連絡先092−925−52311
部会:畜産 専門:飼育管理 対象:家畜類 分類:指導
 
[背景・ねらい]
 交雑種(黒毛和種×ホルスタイン種)去勢牛は、肥育牛として優れた資質を持ってお
り、本県の基幹的肥育牛のひとつとして期待されている。肥育農家では肉質を向上させ
るために、高エネルギー飼料を給与する場合が多く、肥育ステージ毎の摂取栄養・繊維
の過不足等により、第1胃機能不全等の肥育障害を引き起こし、十分な肥育成績を上げ
ていない。そこで、給与混合飼料中の物理的、栄養的繊維成分としての酸性デタージェ
ント繊維(ADF)含量が増体及び肉質等の肥育成績に及ぼす影響を検討し、交雑種去
勢牛の高品質牛肉安定生産技術を確立する・
 
[成果の内容・特徴]
 1 給与混合飼料中のADFを肥育前期16%、中期13%、後期12%程度に増給
すると、延乾物摂取量、ADF摂取量は多くなるが、各肥育期の日増体重および25ヶ
月齢出荷時の体重に大きな差はない(表1)。
 2 枝肉重量、ばらの厚さ、皮下脂肪の厚さ等の量的形質では、ADF摂取量による
差は見られないが、脂肪交雑、肉色、肉締まり等の質的形質はADF摂取量が増えた方
が優れ、枝肉格付け「4等級」以上の出現割合は向上する(表2)。
 3 ADF含量を増やすと、ロース芯の水分含量は低く、粗脂肪含量は高くなる。ま
た、画像解析の脂肪割合、形状係数等が大きくなり、脂肪交雑評価が向上する(表3)。
 4 肥育前・中期のADF含量が増えると、胃壁が繊維で刺激され、第1・2・3胃
が充実し、第1胃の色調(Lab値)も高くなり、反芻胃は健全に発育する(表4)。
 
[成果の活用面・留意点]
 1 県産銘柄牛「福岡牛」の肉質向上技術として活用する。
 2 飼料の切り替えには4週間かけて馴致する。
 
[具体的データ]
 
[その他]
研究課題名:混合飼料中の繊維成分制御による肥育成績の改善
予算区分:経常
研究期間:平成9年度(平成8〜9年)
研究担当者:古賀鉄也、平嶋善典、徳満茂
発表論文等:平成9年度畜産関係試験成績書